シンワオークション株式会社が3月30日に、羽田空港第1ターミナルビル6階のギャラクシーホールで、United Asian Auctioneers「Shinwa Auction × LARASATI Auctioneers × iART auction × KUANGSHI × A|A|A|A × ISE COLLECTION」のイブニングセールを開催した。
このオークションは羽田空港内の保税地域(外国貨物の積卸し、運搬、一時的に蔵置を行うことができる場所)で実施され、一部の作品は保税対象となった。
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予想落札価格が20億円を超える高額作品やNFTアート、20世紀初頭の西洋絵画など、バリエーション豊かな作品が出品された本オークションをレポートする。
今回のオークションの最大の目玉は、キャンバスにシルクスクリーンとアクリルで女優のエリザベス・テイラーの姿を表した、アンディ・ウォーホルの《Silver Liz(Ferus Type)》(1963)だ。本作は更生手続きが開始された鶏卵大手・イセ食品の元会長である、伊勢彦信の持つISE COLLECTIONのもの。予想落札価格は23億〜34億5000万円という破格の高額になり、最終的には23億円で落札。国内のアートオークションにおける記録的な高額落札となった。
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ほかにも、ISE COLLECTIONからは名だたる作家の逸品がオークションにかけられた。シュルレアリスムの薫陶を受けた作家のひとりであるポール・デルボー《灰色の都市》(1943)は、縦横1メートルを超える大型の油彩画だ。予想落札価格は1億2000円〜2億円、オークションでは1億2000万円で競り落とされた。
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ベン・ニコルソンやキース・ヴァン・ドンゲンもISE COLLECTIONより出品。ニコルソン《ルーアン新聞》(1932)は予想落札価格3000万〜4000万円に対して3700万円、ドンゲン《クリップ夫人像》(制作年不詳)は予想落札価格2000万〜3000万円に対して3400万円で落札された。
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日本の抽象絵画黎明期を象徴する作家のひとりである山口長男。今回出品された《五つの線》(1954)は、第3回サンパウロ・ビエンナーレでも展示された、この時代の山口を象徴するマスターピースのひとつだ。億の大台で白熱した競り合いが行われ、最終的に予想落札価格の7000万〜1億2000万円を上回る1億4500万円の値がついた。
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近年、スペインやアメリカで個展が開かれるなど国外人気も高まっている夭折の画家、石田徹也。香港のコレクターより出品された石田の《無題》(1997)は、貴重なオリジナルとあって予想落札価格は3500〜6000万円、最終的な落札価格は6000万円となった。
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洋画も佳作が出品。安井曾太郎《外房風景》(1931)は、予想落札価格400万〜800万円に対して1050万円で落札された。梅原龍三郎《薔薇図》(1963)は予想落札価格1000万〜2000万円に対して1800万円、荻須高徳《シャロンヌ街、紡績工場》(1959)は800万〜1600万円に対して1300万円で落札。そして岸田劉生《村娘図》(1919)は3000万〜6000万円に対して4400万円で競り落とされるなど、堅調な結果を残した。
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NFT作品は3作品が出品された。加納典明《FUCK69 - Colors》(1969/2022)は、1969年に加納がニューヨークで撮影した20の作品をビデオにし、NFT化したもの。予想落札価格250〜500万円に対して500万円で落札された。また、河口洋一郎が過去作を8K映像の為にリファインした《Growth : Eggy Magma 3》と《Growth : Eggy Aqua 4》(ともに1990)はそれぞれ予想落札価格の上限300万円を上回る、520万円と660万円で落札された。
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3月30日に開催されたオークションの落札価額合計は、今回レポートしたイブニングセールにデイセールの額を合わせて31億4572万円。落札率は82.01パーセントだった。
国際空港での保税オークションということで話題が集まった本オークション。ウォーホルをはじめとする高額落札の常連が注目を集めたが、全体としては然るべき作家が然るべき価格で落札される、堅調なオークションだったといえるのではないだろうか。