芸術家としての楳図かずおに迫る。東京シティビュー「楳図かずお大美術展」にエキソニモ、冨安由真、鴻池朋子が参加
マンガ家・楳図かずおの芸術的側面に注目したこれまでにない展覧会「楳図かずお大美術展」が東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)でスタートした。
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数多くのヒット作とともに、その個性的なキャラクターでも知られるマンガ家・楳図かずお。その大規模個展「楳図かずお大美術展」が、六本木ヒルズ森タワー52階にある東京シティビューで始まった。会期は3月25日まで。
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楳図は1936年和歌山県高野山生まれ、奈良県育ち。小学校4年生でマンガを描き始め、高校3年生のとき時に『別世界』『森の兄妹』をトモブック社から単行本で出版・デビュー。『へび少女』『猫目小僧』などのヒット作により、「ホラーマンガの神様」と呼ばれるようになった。楳図の代名詞である『漂流教室』で小学館漫画賞を受賞。いっぽう、『まことちゃん』でギャグの才能も発揮し、作中のギャグ「グワシ」は社会現象となった。この他、『おろち』『洗礼』『わたしは真悟』『神の左手悪魔の右手』『14歳』など、数多くのヒット作を生み出している。
本展では、『漂流教室』『わたしは真悟』『14歳』といった3の代表作とともに、楳図にとって27年ぶりとなる新作が初公開。4年の期間を費やした新作《ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館》は、マンガではなく原画101点の連作絵画として展示されている。同作はまず鉛筆で描かれ、それをコピーし、アクリル絵具で着彩。本展では、この着彩画と鉛筆画の両方を見ることができる。物語をたどるように、1枚ずつ順を追って鑑賞したい。
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今回の展覧会の大きな特徴は、こうした楳図作品のみならず、気鋭のアーティストらが展覧会に参加していることだ。本展キュレーターの窪田研二がアドバイザー・椹木野衣とともに、エキソニモ、冨安由真、鴻池朋子の3組を選出。それぞれが、楳図の世界をインスタレーションで表現している。
インターネット黎明期より一貫してメディア・アートに取り組むアートユニット「エキソニモ」は、大量の使用済みケーブルと12台のモニターから構成された巨大なインスタレーション《回想回路》を入口近くに展示。コマ割りのようにレイアウトされたモニターには、インターネット以前に描かれた『わたしは真悟』の作中場面が映し出される。人工的に生み出された「真悟」を現代に接続させるような本作。作中に登場する東京タワーが実際に作品の背後に見えることにも注目だ。
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現実と非現実の狭間をモチーフに意欲的なインスタレーションを手がける冨安由真は、《ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館》の素描が展示された暗い展示室の中央で新作《Shadowings》を発表した。小屋のような構造物の内部には、素描からインスピレーションを受けたという家具やオブジェクトが配置され、5分周期で様子が移り変わる。
鴻池朋子は『14歳』をテーマに新作を制作。14歳の楳図を想像して描いた巨大なドローイングを中心に、楳図作品に象徴的に登場する非常階段や、『14歳』の終盤に登場する「ゴキンチの先生」の顔をオモリとした振り子など、複数の要素を組み合わせたインスタレーション《かずお14歳》とともに、『14歳』のセリフを抜き出して左手で書いた原稿用紙《14歳 左手のエチュード》を展示している。
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楳図かずおという人物を、マンガ家としてだけではなく、芸術家としても提示することに挑んだ本展。楳図作品に見られる先見性と、そこに接続する現代作家たちの共演をお見逃しなく。
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