11月4日~7日まで「アートウィーク東京」が開催される。これは、一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォームが主催する、都内50のギャラリーと6つの美術館が協働するアートイベントだ。
このイベントでは、錦糸町、新宿、天王洲、駒込といった東京の東西南北をカバーしながら4つの巡回ルートでアートバスを運行。参加者はフリーパスによってバスに乗りながら参加するギャラリーや美術館を回ることができる。
バスは参加ギャラリーや美術館の最寄りの臨時バス停を回り、約15分おきに運行。パスを購入すれば乗り降り自由となる。各バスルートは結節点もあって乗り換えも可能なので、各所の様々な展示を一挙に効率よく巡ることができる。また、会期中には各ギャラリーに「アートウィーク東京」の対応スタッフも常駐する。
4つのルートのバスでは、それぞれグループ・音楽、塩見允枝子、高山明、毛利悠子の作品を体験でき、例えば毛利は、東京の街と日本の歌謡曲の歴史を重ねながら、ムード歌謡歌手で芸人のタブレット純と音楽評論家の湯浅学が東京の街案内をする音声を提供。バス内で音声が流される。
こうしたアートウィークは、ロンドン、ベルリン、北京といったアートコミュニティが存在する大都市では例外なく開催されている。しかしながら東京はギャラリーが広範囲に点在することもあってこれまで開催されておらず、今回満を持しての開催となった。アートウィークは来年以降も継続的に実施する予定で、新型コロナウイルスが落ち着いた暁には、海外からの来客に対して東京のアートシーンをプレゼンテーションする場として機能させるという。
「アートウィーク東京」ディレクターのTake Ninagwa代表・蜷川敦子は開催にあたって次のように述べた。「参加しているギャラリーや美術館とビジョンを共有し、コミュニティが一体となってアートウィークのかたちを創造することがとても重要で大きな挑戦だと思っている」。
今回は東京国立近代美術館や六本木、アーティゾン美術館を経由し、東京都現代美術館などを回るルートBに乗車し、ルートにあるギャラリーをいくつか紹介したい。
蜷川が代表をつとめる麻布のTake Ninagwaでは、来年に東京国立近代美術館で個展を控える大竹伸朗の5年ぶりの新作個展「残景」が会期中開催される。
今回展示されるのは、大竹が取り組んできた「残景」シリーズの新作。大理石の粉末や砂、小石等の素材を組み合わせた分厚い堆積物からなる「記憶の最後に残る景色」を探求した作品群を堪能したい。
「アートウィーク東京」の協力に名を連ねる、国内50のギャラリーが参加する一般社団法人日本現代美術商協会(CADAN)。そのCADANが展開しているCADAN有楽町では、群馬・高崎に拠点を置くrin art associationの手による鬼頭健吾、小金沢健人、水戸部七絵、やんツーのグループ展「COMBINE!」が期間中開催されている。
このグループ展は、1950年代初頭に過激なコラージュのいち形式として生まれたコンバイン・ペインティングを再考するもの。写真や3次元のオブジェクトを組み合わせたこの技法が、現在どのような含意で用いられているのか、その表現動向を4人の作家の作品から探る。
銀座のギャラリー小柳では、資生堂が企画する公募展「第14回shiseido art egg」でshiseido art egg賞を受賞した橋本晶子の初個展「I saw it, it was yours.」を開催。
白い紙に鉛筆でシンプルなドローイングをしつつ、その紙を折ったり曲げたりたりすることで、光や影とともに空間をつくりあげる橋本の作品を楽しむことができる。
最後に、ツアーに組み込まれているアーティゾン美術館の展示を紹介したい。同館では石橋財団コレクションと現代美術家の共演として展開される展覧会「ジャム・セッション」の第2弾として「石橋財団コレクション×森村泰昌 M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」が開催中だ。これは、森村泰昌が青木繁《海の幸》(1904)と対峙して新作を制作したもので、森村が《海の幸》をどのように受け取って自身の作品として昇華したのか、その思索をたどるようなユニークな展覧会となっている。
同館公報の松浦彩は「アートウィーク東京」の試みについて、次のようにコメントしている。「ギャラリーとともに美術館までを巡回できるアートウィークを、新たな試みとして歓迎している。過去を現在につなげ、現在を未来につなげる試みとして、美術館としての立場から応援したい」。
ギャラリーや美術館をバスで広範囲にわたるギャラリーや美術館をまわることで、新たな現代美術と出会える貴重な機会。11月4日~7日の「アートウィーク東京」に参加してみてはいかがだろうか。