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2021.7.2

様々なルールを多角的な視点からとらえる。「ルール?展」が21_21 DESIGN SIGHTで開幕

法律や法則などの社会的規範、無意識に根づく慣習など様々なルールを多角的な視点からとらえる展覧会「ルール?展」が21_21 DESIGN SIGHTでスタート。「新しいルール」の見方を解釈し、ルールと向き合う多様な方法を紹介する本展の見どころをレポートする。

展示風景より、手前はコンタクト・ゴンゾ《訓練されていない素人のための振付コンセプト003.1(コロナ改変ver.)》(2021)
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 法律や法則などの社会的規範、文化的背景に基づいた規則やマナー、無意識に根づく慣習など、様々なルールのとらえ方を多角的な視点から探る展覧会「ルール?展」が、7月2日に21_21 DESIGN SIGHTで開幕した。

 本展では、法律家の水野祐、コグニティブデザイナーの菅俊一、そしてキュレーターの田中みゆきの3名がディレクターチームを組み、それぞれの視点から「新しいルール」の見方やつくり方などを解釈。国内外のデザイナーやアーティスト、もしくはNPO法人などの作品を通じて、ルールと向き合う多様な方法を紹介する。

展示風景より

 水野は、本展の企画は2019年10月頃からスタートしたとし、「いま、コロナやオリンピック、政治などの話もあり、社会が激変している時代でルールというものをどう自分なりに咀嚼してとらえていくかということは、2年を経ってより非常に身近になり、皆さん自身の必要性を感じている方もいるのではないかと思っている」と語る。

 展示会場のロビースペースには様々なサイズの箱が置かれており、鑑賞者はこれらを自由に使ったり会場内で移動したりすることができる。

展示風景より、会場内で自由に移動できる箱

 箱の横には、水野と菅が企画構成した「ルールのつくられ方(法令の場合)」が展示。このコーナーでは、日本の法令を例にルールがどのようなプロセスでつくられているかを紹介。事前のプロセスである法律案の原案から法律が施行されたあとの事後のプロセスまで、私たちが法律案に関与できる可能性や、法律としてのルールが不断に見直したり調整したりされるべきものであることを示している。

展示風景より、「ルールのつくられ方(法令の場合)」(企画構成=水野祐、菅俊一)

 ギャラリー1では、ダニエル・ヴェッツェル(リミニ・プロトコル)+田中みゆき+小林恵吾(K2LAB)×植村遥+萩原俊矢×N Sketch Inc.による参加型作品《あなたでなければ、誰が?》(2021)が展示されている。

展示風景より、ダニエル・ヴェッツェル(リミニ・プロトコル)+田中みゆき+小林恵吾(K2LAB)×植村遥+萩原俊矢×N Sketch Inc.《あなたでなければ、誰が?》(2021)

 約15分ごとの入れ替え制で、最大14人ずつで体験できる本作では、鑑賞者が自ら統計を構成するサンプルとなり、様々な質問に対して与えられた選択肢から自分の答えを選択。多数派と少数派を分ける答えを通じて民主主義社会の構造を考える機会を提示している

 続くギャラリー2で展示されている作品をいくつかピックアップして紹介したい。3人のディレクターチームと平瀬謙太朗の企画構成による「規制によって生まれる形」と「企業が生むルール」は、私たちが普段触れている製品などにおけるルールを考察するものだ。

展示風景より、「規制によって生まれる形」(企画構成=水野祐、菅俊一、田中みゆき 企画協力=平瀬謙太朗)

 前者では、ドローン、ビール系飲料、電動キックボードをテーマに、製品の外観や仕様がどのように規制と関わっているかを紹介しながらその新たな可能性を探る。後者では、企業が開発した製品やシステムがルールとして社会に定着することに着目し、標準として普及したルールと企業の関係を明らかにする。

 遠藤麻衣の《アイ・アム・ノット・フェミニスト!》(2017/2021)は婚姻制度としてのルールに着目した作品。写真家の森栄喜と共演したこの映像作品では、恋愛関係ではない親密な関係性のあり方について議論を行い、婚姻契約書をつくる様子が描かれている。展示会場には、ふたりが合意した婚姻契約書の実物も並んでいる。

展示風景より、遠藤麻衣《アイ・アム・ノット・フェミニスト!》(2017/2021)

 ギャラリー2を出たスペースでは、丹羽良徳の映像作品《自分の所有物を街で購入する》(2011)が上映されている。作家が自身の所有物を様々な売り場に置くことで一旦商品に戻し、ふたたび購入して自身の所有物にすることを描いた同作では、今日の経済システムや売買契約としてのルールを問いかける。

展示風景より、丹羽良徳《自分の所有物を街で購入する》(2011)

 そのほか、早稲田大学吉村靖孝研究室による《21_21 to “one to one”》(2021)が会場の21ヶ所に設置。この作品は、安藤忠雄と日建設計が設計した同館の建物を原寸大の展示物とし、流通、構法、規格などのルールについて解説。同館の建物について再認識する機会でもある。

展示風景より、早稲田大学吉村靖孝研究室《21_21 to “one to one”》(2021、一部)

 ディレクターチームのひとりである田中は、本展について次のようなコメントを寄せている。「この展覧会は来る人が主役の展覧会。そのために来る人が見ることだけではなく、そのルールを自分だったらどう使うか、展覧会を出たあとにどう持ち帰るかということに注力した。今回はこのテーマを展示することにあたって、そのカテゴリを越境し、さらにその想像の範囲を広げるようなことができたらいいなと思っている」。

 私たちの思考や行動様式を形成し、日常生活のなかで絶えずに私たちに影響を与える様々なルール。それを新たな視点からとらえ、示唆に富んだ展覧会が開幕した。

展示風景より、手前は石川将也+nomena+中路景暁《四角が行く》(2021)
展示風景より、一般社団法人コード・フォー・ジャパン《のびしろ、おもしろっ。シビックテック》(2021)
展示風景より、田中功起《ひとりの髪を9人の美容師が切る(二度目の試み)》(2010)