AdvertisementAdvertisement
2020.10.20

21_21 DESIGN SIGHTで「トランスレーションズ展」が開幕。多様な実践に見る「翻訳」の可能性とは?

東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで、情報学研究者のドミニク・チェンをディレクターに迎えた「トランスレーションズ展 ―『わかりあえなさ』をわかりあおう」が開幕した。会期は2021年3月7日まで。

Google Creative Lab + Studio TheGreenEyl +ドミニク・チェン ファウンド・イン・トランスレーション
前へ
次へ

 東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで、「トランスレーションズ展 ―『わかりあえなさ』をわかりあおう」が開幕した。会期は2021年3月7日まで。

 展覧会ディレクターを務めるのは、情報学研究者のドミニク・チェン。本展は「翻訳はコミュニケーションのデザインである」という考えに基づき、複数の言語間の翻訳を超え、アートやデザイン、身体表現、動物や微生物との対話にいたるまで、その可能性を多角的に探るもの。会場構成はnoiz、グラフィックデザインは祖父江慎+藤井瑶(cozfish)がそれぞれ担当した。

 新型コロナウイルスの影響により延期となっていた本展。同館館長の佐藤卓はオンライン記者会見で、「コロナ禍は私たちに、日常の当たり前を見直し、新しいコミュニケーションのあり方を探るきっかけをもたらしました。この状況のなかで、本展のテーマはさらに意味を深めることになったと思います」とコメントした。

和田夏実+signed Visual Creole

 また、ドミニク・チェンは「私は日本語、フランス語、英語を使い、ひとりの『外国人』として日本に住んでいますが、翻訳というテーマはとても日常的なものです。『わかりあえなさ』は翻訳によって解決されると思われていますが、逆にこぼれ落ちてしまう意味もたくさんあるはずです。『わかりあえなさ』をわかりあおう、という副題にはそういう意味も含まれています」と語った。

 本展では、様々な分野から集まった21作品を、「ことばの海を泳ぐ」「伝えかたをさぐる」「体でつたえる」「文化がまざる」「昔とすごす」「モノとのあいだ」「異種とむきあう」の7つのゾーンに分けて構成。

Google Creative Lab + Studio TheGreenEyl +ドミニク・チェン ファウンド・イン・トランスレーション

 Google Creative Lab+Studio TheGreenEyl+ドミニク・チェン《ファウンド・イン・トランスレーション》は、本展のために制作された新作のインスタレーション。来場者が会場のマイクに向かって話すと、その言葉が23ヶ国語に翻訳され表示される。翻訳の結果だけではなく、機械が言葉を発見していくプロセスを可視化した作品だ。

 また「伝えかたをさぐる」のゾーンでは、聴覚障害を持つ人に、音を振動に変えて伝える本多達也《Ontenna(オンテナ)》など、感覚を「翻訳」する方法を模索するデバイスなどを紹介。清水淳子+鈴木悠平《moyamoya room》は、参加者の抱える「モヤモヤ」を議論し、「グラフィックレコーダー」である清水が絵と言葉で記録するというものだ。

清水淳子+鈴木悠平 moyamoya room

 伊藤亜紗(東京工業大学)+林阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)+渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)《見えないスポーツ図鑑》は、視覚障害の有無に関わらず、言語や視覚以外の方法でスポーツを観戦する方法を探る共同研究。本展では、日用品を用いてスポーツの動きを「翻訳」する試みを見ることができる。

 そのほかにも会場では、様々な対象やメディアに関わる「翻訳」の実践を展覧。ドミニク・チェンは「それぞれの作品が、ケアという視点を持っていると思います。他者とのあいだに『ケア』の関係性が生まれて、はじめてお互いのわかりあえなさをわかることができるのではないでしょうか」と語った。本展では、身近な他者とのコミュニケーションを考え直すきっかけを得ることができるだろう。

 なお同館では次回展として、水野祐、菅俊一、田中みゆきがディレクターチームを務める「ルール?展」を予定している。

エラ・フランシス・サンダース 翻訳できない世界のことば
伊藤亜紗(東京工業大学)+ 林 阿希子(NTT サービスエボリューション研究所)+渡邊淳司(NTT コミュニケーション科学基礎研究所) 見えないスポーツ図鑑