デジタルテクノロジーやアート、生物学、建築の境界を越え、新たな建築や空間のありようを模索する建築集団「チームラボアーキテクツ」によって設計された保育園「キッズラボ南流山園」が、千葉・流山に開園した。
同園は、情報社会における幼児教育に焦点を当て、幼児期から多様性を重要視し、様々な人と一緒に過ごす体験ができる場所となるように設計。保育園を通じて、空間認識能力など情報社会で必要な経験や能力を積むことで、子供たちが情報社会で欠かせないマインドを持つきっかけになることを目指している。
2階建ての保育園は、芝が生える園庭や、U字型に排列される室内空間とそれに囲まれている内庭で構成。園内に入って印象に残ったのが、チームラボがこれまでの作品のなかで一貫してきた、全身を使って作品や空間を体験するということだ。
例えば、1階の園庭には山のようなかたちにした遊び場がある。中央の内庭は、砂の遊び場や凸凹した地面、網でできた柔らかい網など立体的な空間によって構成されている。子供たちは、こうした現代社会にあふれている平たい場所とは異なる空間で体全体を動かして遊ぶことで、空間認識能力を鍛えることが促されている。
室内空間は従来のまっすぐな四角形のスペースとは異なり、多角形の空間となっている。室内の部屋は廊下の空間とつながっており、室内外にいる子供たちは互いを見て過ごし、ときには年齢を超えて遊ぶこともできる。各部屋では様々な色やかたちが使われており、多様な個性を認め合えるスペースを目指している。
また、新興住宅地に建つ今回の保育園は、まわりの建物の建築形式と違和感がないように設計。その屋根は複数の寄棟が集合したデザインを採用し、多様な人々が個性を伸ばしながら同じ空間を共有することを象徴している。外壁につけた特徴的な窓はランダムに配置され、それぞれの窓から見た外の世界も異なるだろう。
チームラボアーキテクツの建築家・井村英真は今回の保育園について、「普通の家ではカラフルな床などはないと思うし、一般の保育園や公園なども四角形となっているものが多いです。子供たちが今回の保育園に通って空間認識能力を身につけて、また1回、2回で飽きるのではなく、クリエイティビティに満ちたことが日常になることを願っています」と話している。
脳と体を同時に使うことで情報社会を生きるには欠かせない能力を鍛え、また互いに尊重し合って多様性を肯定するキッズラボ南流山園。示唆に富む幼児教育の場が誕生した。