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「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」が山種美術館で開催中。日本画の巨匠が描いた動物たちが集結

竹内栖鳳をはじめとした、近代から現代にかけての日本画家が動物を描いた作品による展覧会「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」が東京・広尾の山種美術館で開催されている。会期は11月15日まで。

展示風景より、手前が《双鶴》(1912〜42頃)

 竹内栖鳳をはじめ、近代から現代にかけての日本画家が動物を描いた作品による展覧会「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」が、東京・広尾の山種美術館で開催されている。会期は11月15日まで。

 まず、同展の第1章「《班猫》と栖鳳が描いた動物たち」では、江戸時代以来の円山四条派の伝統を受け継ぎながら、幅広い流派の技術を柔軟に学び、近代の京都画壇を牽引した竹内栖鳳(1864〜1942)による作品の数々が展示される。

展示風景

 栖鳳は生涯で数多くの動物を描き、動物画の名手として高く評されていた。とくに、本展の表題にもなっている《班猫》(1924)は重要文化財にも指定されており、猫を自身の画室に放し、写生や写真撮影を行いながらとらえたという一瞬の動きや表情が、生き生きと表現されている。

展示風景より、竹内栖鳳《班猫》(1924)

 ほかにも、湿り気のある柳の木に止まる白鷺を絶妙な構図で配した《雨霽》(1926)や、限られた筆致で木の枝に止まるミミズクを描いた《みゝづく》(1933頃)など、栖鳳の動物に対する徹底した観察と、深い慈しみを感じられる作品が顔を揃えた。

展示風景より、竹内栖鳳《雨霽》(1926)
展示風景より、竹内栖鳳《みゝづく》(1933頃)

 第2章「アニマルパラダイス」は、近代以降の日本画家たちが動物たちを描いた絵画を広く紹介する。

 まず、目を引くのが栖鳳の弟子である西村五雲(1877〜1938)が文展(文部省美術展覧会)に出品した《白熊》(1907)だ。五雲は、日本で2番目の動物園として開館した京都市動物園で初めて目にした白熊を繰り返し写生し、同作を完成させた。動物描写では師である栖鳳をも凌ぐと言われた五雲の、高い技術と迫力ある表現を目にすることができる。

展示風景より、西村五雲《白熊》(1907)

 また、《松鶴》(1933)は、吉祥の画題として古くから好まれた松と鶴の取り合わせを描いた華やかな作品。羽の1枚1枚が表情豊かに表現され、こちらも五雲の巧みな筆使いを感じられる。

展示風景より、西村五雲《松鶴》(1933)

 奥村土牛(1889〜1990)の作品にも注目したい。3羽のウサギを描いた《兎》(1936)は、当時珍しかったアンゴラウサギを飼っている人がいると聞き、土牛がわざわざ現地を訪れて写生し完成させた作品。柔らかな毛並みなどに、丹念な観察による繊細な表現が見て取れる。

展示風景より、左から奥村土牛《兎》(1936)、《鹿》(1968)、《聖牛》(1953)

 また《聖牛》(1953)は、丑年の生まれで雅号にも牛の字を持つ土牛が、長野・善光寺にインドから贈られた牛を1週間かけて写生してつくりあげた作品だ。《兎》と同様に、土牛の徹底した写生へのこだわりが感じられる。

展示風景より、奥村土牛《聖牛》(1953)

 同展の出展作品のなかでも最大のものが、小村大雲(1883〜1938)による大作《東へ》(1915)だ。歴史画や風俗画、山水画までを幅広く手がけた大雲は生来の動物好きであり、自宅でクマやサル、キツネ、軍鶏、クジャクなどを飼い「大雲動物園」とまで言われていたという。

 同作は、大雲が朝鮮半島を訪れた際に目にした、役人の引っ越しの様子から着想したもの。一家が大平原を行く様を、仔細なロバの描写とともに描いている。

展示風景より、小村大雲《東へ》(1915)

 さらに、目に金泥が塗られて闇夜でも光り輝くように工夫されている横山大観(1868〜1958)の《木菟》(1926)や、速水御舟(1894〜1935)が代表作である重要文化財《炎舞》の翌年に制作した《葉蔭魔手・粧蛾舞戯》(1926)など、大家が生き物の姿と向き合った傑作が並び、多様な表現を一挙に見ることが可能だ。

展示風景より、横山大観《木菟》(1926)
展示風景より、速水御舟《葉蔭魔手・粧蛾舞戯》(1926)

 また、同展の併設展示として、昭和から平成にかけて活躍した歴史画の第一人者、守屋多々志(1912〜2003)による《西教伝来絵巻》試作も特別公開される。同作は2019年11月のローマ教皇の来日を記念してヴァチカンに献呈されるもので、日本で公開される最初で最後の展示となっており、この機会にぜひ見ておきたい。

展示風景より、守屋多々志《西教伝来絵巻》試作 上巻

 動物という誰もが親しみをもてるテーマながらも、日本画ならではの繊細かつ豊かな表現と、それを実現する技術を改めて感じることができる展覧会となっている。

展示風景
展示風景
展示風景

編集部

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