先鋭的で新しい感性を持ったアーティストやギャラリーを紹介するアートフェア「DELTA Experiment」が大阪のTEZUKAYAMA GALLERYで開幕した。会期は8月28日〜30日。
同フェアは高橋亮(DMOARTS/digmeout/UNKNOWN ASIA)と岡田慎平(TEZUKAYAMA GALLERY)の共同主催によるもの。東京、大阪、京都から7つのギャラリーを厳選し、ギャラリーとコレクター、アートファンをつなぐ新しい「場」の創造を目指す。
出展ギャラリーは、DMOARTS(大阪)、FINCH ARTS(京都)、FL田SH(東京)、EUKARYOTE(東京)、HARMAS GALLERY(東京)、LEESAYA(東京)、TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)。
まずは、FM802のアートプロジェクト「digmeout」がプロデュースするDMOARTSから、各ブースの様子を見て行きたい。
DMOARTSは、油彩による人物画の目を燃やしてモチーフのリアリティを追求する倉崎稜希や、存在の痕跡や気配をテーマとした絵画を描く小谷くるみ、日常を違う角度でとらえた立体作品などを制作する田村琢郎の3人の作品を出展。個性の異なる若手作家を並べることで、表現の多様性を印象づけた。
京都・浄土寺のArt Complex「浄土複合」にスペースを構えるFINCH ARTS。グラフィティカルチャーをベースに多彩な活動を見せるNAZEや、木炭によるドローイングを発展させて絵画や黒い陶土の陶作品を制作する西太志らの作品を展示。谷本真里、水谷昌人、飯田美穂の作品も織り交ぜながら、立体作品と平面作品それぞれの表現の可能性を見せる。
今年7月まで、ギャラリー、ショップ、リソグラフ印刷スタジオが一体となったアートショップを東京・外苑前で運営していたFL田SH。現在は移転準備中だが、今回は東京より作品を持ち込んだ。ドローイングマシンがグラフィティを描いたやんツーの作品や、街で普段目にするものを、ユーモラスに擬人化・文字化させて絵画で表現するDIEGO(ディエゴ)、さらに成澤果穂、光岡幸一の作品を展示。FL田SHが志向する「同路上性」が各作品の連続性により示唆されている。
東京・神宮前のEUKARYOTEはシルクスクリーンの技法を併用しながら精緻な絵画作品を制作する菊池遼を特集。写真をもとにドットを描き出した作品や、水墨画を思わせる静けさのある作品など、大小の円形の作品がそれぞれ異なる世界を湛えている。
東京・清澄白河のHARMAS GALLERYは、3人のアーティストをピックアップした。アルミ複合板の上の油絵具を筆や指で伸ばして生乾きの質感の作品を描く清水信幸、骨壷から発想しぬいぐるみや達磨を透明のアクリルで包みこむ永井天陽、人体をモチーフに身体のパーツが複雑に融合した石彫をつくる今野健太。各々が創作で突き詰めるものが、使用する素材からも伝わってくる。
今年10月にオープン1周年を迎える東京・目黒のLEESAYA。SFや科学哲学などを参照した作品を手がける須賀悠介と、執拗なまでに磨かれたパネルの表面にペイントを施した神馬啓佑のふたりを紹介。
最後に、今回のアートフェアの会場にもなったTEZUKAYAMA GALLERYは、古代の神仏像や植物をモチーフとしたセラミック彫刻や、動物を描いたアクリル絵具による絵画作品を発表した小池一馬、光と空間をテーマに薄く溶いた絵具を幾層にも塗り重ねて表現する古典技法「グレーズ」を現代的なメディウムに置き換えて制作する和田直祐など、強い印象を与える作品を展示していた。
主催者のひとり、高橋亮は同アートフェア開催の思いを次のように語る。「関西のアートシーンには新しい動きが少ないと感じていた。共同主催の岡田と相談しつつ、新しい世代のアーティストを紹介するために、大阪、京都、東京の3都市で自分たちがかっこいいと思うギャラリーやアートスペースに声をかけて実現させた」。
また、フェアのタイトルにつけられた名称に込めた思いについて、次のように語った。「正三角形の多面体を表す『DELTA』というタイトルも、3つの都市の尖った部分を集めたいという思いを込めた。これをきっかけに、より関西のアートシーンがおもしろくなってくれれば」。
なお、会場はPeatixによる事前予約優先制となっている。詳細は「DELTA Experiment」のウェブサイトを参照してほしい。また、同フェアのオンラインビューイングが、会期終了後の8月31日より「OIL by 美術手帖」で開催される。