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日本美術の名作はどうやって生まれたのか? 東博「名作誕生」展で見るそのつながり

長い日本美術史上で数多生み出されてきた「名作」。それら名作同士のつながりに着目する展覧会「名作誕生—つながる日本美術」が4月13日より東京国立博物館でスタートする。

展示風景より国宝《普賢菩薩像》(12世紀)

 1889年に岡倉天心らが創刊し、いまなお発行され続けている世界最古とされる美術雑誌『國華』(こっか)。その創刊130周年を記念して開催される展覧会が、4月13日から東京国立博物館平成館で開催される「名作誕生—つながる日本美術」だ。

 本展では、ジャンルや地域、そして時代を超えた日本美術の「名作」約120件が集結。会場には国宝《普賢菩薩像》(12世紀)や国宝「聖徳太子絵伝」(1069)などをはじめ、展覧会タイトルが示す通り、数多くの名作が展示されているが、特徴的なのはその見せ方だろう。

 例えば、展覧会の冒頭を飾る第1章「祈りをつなぐ」の「一木の祈り」セクションでは、奈良・元興寺の国宝《薬師如来立像》(8〜9世紀)や、京都・阿弥陀寺の重要文化財《薬師如来立像》(9世紀)など、一木造りによって生み出された薬師如来立像6体を並べて展示。

「一木の祈り」より手前が奈良・元興寺の国宝《薬師如来立像》(8〜9世紀)

 また、同章の「祈る普賢」セクションにおいては、ともに国宝の《普賢菩薩騎象像》(12世紀)と《普賢菩薩像》(12世紀)、重要文化財の《普賢菩薩像》(12世紀)などが一堂に展示され、同じ題材でありながらも異なる表現を並べることで、それぞれの影響関係を垣間見ることができる。

右から《普賢菩薩騎象像》(12世紀)、《普賢菩薩像》(12世紀)

 続く第2章「巨匠のつながり」では、人気を博している伊藤若冲の作品を模倣という視点で紹介。文正や陳伯仲といった中国の画家の作品を模写しつつ、若冲が自らの創造性を込めた《白鶴図》(18世紀)。あるいは、過去の自作からモチーフを引用し再登場させた《仙人掌群鶏図襖》(1789)など、ただ若冲作品を展示するだけではなく、若冲作品の系譜や、その読み解き方を提示するような方法がとられている。

伊藤若冲の作品が並ぶ第2章の展示風景。中央が《仙人掌群鶏図襖》(1789)

 このほか第3章「古典文学につながる」では、伊勢物語や源氏物語といった古典文学がどのように芸術作品に取り入れられたのかを重要文化財《夕顔蒔絵手箱》(15世紀)、国宝《初音蒔絵硯箱》(1639)などで紹介。

 第4章「つながるモチーフ/イメージ」にいては、吉野山や松林といった山水画、さらには蓮や雀といった花鳥画を展覧。また、葛飾北斎や歌川国芳の作品を踏まえたと考えられている岸田劉生《道路と土手と堀(切通之写生)》(1915)など、時代を超えたモチーフの引用にも注目したい。

重展示風景より要文化財《夕顔蒔絵手箱》(1639)

 これまで、単体では目にする機会も多かった名作の数々。それを「つながり」という視点でキュレーションした本展は、日本美術の連綿と続く歴史をあたらめて認識させてくれる。なお、本展の巡回はなし。ぜひこの機会に東京国立博物館を訪れたい。

右が会場の最後を飾る岸田劉生《道路と土手と堀(切通之写生)》(1915)

編集部

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