日本アカデミー賞受賞映画の劇中歌など、数多くの作品を手がけてきた作曲家として知られる池内喜勝による、初となる絵画個展「MUSORY ~ 池内喜勝 Experience ~」が、11月15日と16日に京都国立博物館 明治古都館で開催された。

池内は幼少時代、正月は家族で集まって画家の祖父とともに絵を描いていた。これは毎年の恒例行事で、祖父が出したお題を好きに表現する遊びだったという。今期の展示のきっかけは、このようにして自分が生まれ育ったこの町で、自身の作品を見てもらいたい、という思いからだ。幼少期から慣れ親しんできた風景や空気、人との出会い。その土地に流れる時間が自身の作品の奥底に息づいていると感じ、最初に影響を受けた場所へ表現を「還したい」という心境が、今回の個展へとつながった。
また、京都の社会問題のひとつである、伝統工芸品の衰退や店舗の廃業も本展の念頭にはあったという。池内の祖母が20年近く伝統工芸の店をやっていたこともあり、近くでその現実を見ていた身として、その問題に向き合うことも今回の個展のテーマになっている。長い歴史で受け継がれてきた技法や素材が語りかけてくる歴史を鑑賞者に伝えるため、廃材を使った作品作りやオリジナルの着物なども個展に取り入れた。

会場では、2024年から25年にかけて制作されたアクリル・キャンバス作品7点と、ドローイング6点を展示。出品作には《無題》(2024、2025)、《手に残る光》(2024)、《ベルム − VELM》(2025)、《欲の形而》(2025)などが並び、いずれの作品も内面に沈潜するような色彩と構造が特徴だ。

展示の主題となっていたのは「調和を求めぬ眼差しが照らす、内なる真実」という言葉。外部との調和ではなく、内側に沈む感覚そのものを掘り下げる姿勢が、今回の制作全体を貫いている。

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