自身の手で渦状に巻いた銅線のパーツから立体作品をつくり上げる彫刻家・西島雄志。その初となる大型個展「瑞祥 zui-shou ―時の連なり―」が東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開催される。会期は4月28日〜6月4日。
西島は1969年神奈川県出身で、東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業。人が感じる「存在」や「気配」に関心を持ち、近年では鹿や象、八咫烏(やたがらす)など、神話に縁の深い動物を題材に立体作品やインスタレーションを国内外で発表してきた。
その作品の数々は何千ものパーツから構成されている。長い時間をかけて緻密に設計された輪郭や空間でのあり方からは、目に見えない「気配」への想像を一層掻き立てられるだろう。
本展では、新作のインスタレーションを含む4点の作品を展示。めでたいことや吉祥を意味する「瑞祥」という展覧会タイトルにも表されているように、ここ数年続いてきたパンデミックからの明るい兆しや希望を、鳳凰や龍といった「神」をモチーフに表現するという。
編集部はこの個展の開催に際し、展示作家である西島にメールインタビューを実施。作品制作にまつわる西島の関心やその考え方について話を聞いた。
──西島さんが、人、もしくは人が感じる「存在」や「気配」に関心を持ったきっかけはなんでしょうか。
西島 人やモノと接するときに、目に見えること以外の「何か」を通してやり取りをしていると感じることが多く、その「何か」に興味を持ちました。それは物質として不在となったところからも感じ取ることができると気づき、その感覚の方がリアルだと思うようになったのがきっかけです。
──作品および展示空間における「実体」と「気配」のバランスをどのように考えられていますか。
西島 作品により変化しますが、「カタチ」を認識できる最小限の「実体」を空間に存在させることで「気配」を感じさせるようにバランスをとっています。「実体」の延長上に「気配」を感じ取れる隙間がつくれているかどうかが重要となります。展示空間や光によっても「気配」は大きく変化するので、全体のバランスの取り方にはかなり神経を使っています。
──作品にもよると思いますが、ひとつの作品を紡ぎあげるのにどのくらいの時間や試行錯誤を積み重ねますか。
西島 日常生活のなかで作品のパーツとなる銅線を巻く行為を行っていて、その積み重ねから制作が始まっています。ひとつの作品をつくり上げているときも休憩時間やちょっとした待ち時間など、日常的に巻く行為は平行して行っていて、その巻いたものは次の作品やその次の作品に使われたりします。ですので、制作時間という区切りがなく時間が連なっている感覚です。作品についての試行錯誤は銅線を巻くことで思考が進んだりクリアになっていくことが多いので、行為そのものがエスキースやドローイングと似たような役割を持っています。今回展示する鳳凰と龍をモチーフにした大型作品《瑞祥 zui-shou》は昨年秋頃に巻き始めたものからつくり始めており、単純な計算だと8〜9ヶ月程度かと思います。
西島の手によって生み出され、都心に静かにすがたを表す神々の存在。この静謐な空間に足を運び、それらの「存在」や「気配」を感じ取ってみてはいかがだろうか。