多様な文化の源といえるアフリカ。その土地に生まれた「アフリカン・アート」を展観する展覧会「AFROMATIC TOKYO 2022 -ビューイング- 」が、代官山ヒルサイドテラス エキシビションルームで開催される。会期は8月30日〜9月2日。
本企画は、2019年にベルリンで開催された「Nigerian Culture Day」から着想を得たもの。日本では初の試みとなる現代美術とファッションの総合イベントで、今後は香港、上海、ソウルでの開催を視野に入れているという。
キュレーションテーマは「航海者の宝」。初回となる本年は、アフリカ屈指の経済大国として世界的にも大きな存在感を放っているナイジェリアにフォーカスしており、23作家による26点の現代美術作品が紹介される。
本展のキュレーターでアートコレクターのグレース・オシメはステートメントで次のように述べている。「(これらの)作家は様々な色相、筆遣い、メディアを駆使し、政治、文化、商業、移民などアフリカ大陸の希望の物語を語りかける。この力強い作品たちに私たちは歴史と未来への希望を感じずにはいられない」。
例えば、ジェラルド・チュクウマは1973年ナイジェリア・ンスカ生まれのアーティスト。環境問題に強い関心を持ち、作品にリサイクル材を用いて絵画、彫刻、家具を手がけ、ナイジェリア国内外で精力的に活動している。
アリミ=アデワレの「Migration (移民)」シリーズは、アフリカにおける移民問題をテーマにしたもの。アフリカの人々の絶え間ない国境の先への旅、その向こうにはさらに大陸を超えた旅が続いていることを表現している。
ウスマン=ワハブの「Ballerina(バレリーナ)」シリーズでは、空中を踊るイメージをモチーフとしており、「たとえ多少の恐れがあっても、風に流され気楽に考えよう」というオプティミズムなメッセージを見る者に伝えている。バレリーナのCカーブのポーズは、作家の不安からの解放の表現でもある。
本展の広報協力を担当している南條史生(エヌ・アンド・エー株式会社 代表取締役)は、アフリカン・アートの魅力について次のようにコメントしている。
「アフリカのアートが、いま、世界中で注目されていることをご存知だろうか。かつては土着的な民俗芸術作品が知られていたが、現在では、まさに現代アートの文脈で語るべき作品が目白押しに登場している。(中略)今回紹介するそれら作品群は、総じてカラフルで強い筆致からなり、まさに人生を謳歌するビートが聞こえてくるような作品が多い。そしてその根底を流れるのはアフリカの自然、環境、歴史、政治、経済に対する問題意識である。しかし、もっとも強く聞こえてくるのは、そうした作品全体に共通するある種のおおらかさ、ユーモア、スケールの大きさではないだろうか。日本もこの機会にアフリカのアートに目を向けてほしい」。
暴動、貧困、紛争、奪略という不幸な歴史のうえでのみ語られてきたアフリカを概念的に塗り替え、さらにはグローバルなアートシーンを席巻する最先端のアフリカン・アートのいま。ぜひ会場で目撃してほしい。