伝統の核心と智恵を保持しつつ、タイの古典舞踊の言語と現代的感覚をつなげる振付家/ダンサーのピチェ・クランチェン。彼のダンスカンパニーによる最新作『No. 60』が、ロームシアター京都にて3月26日、27日の2日間にわたり上演される。
ピチェ・クランチェンは、幼少期よりタイ古典舞踊「コーン」の訓練を受けており、そこで用いられる踊りの言葉を現代的な感覚とつなげる取り組みで知られる。その活動はタイのみならず、日本をはじめ世界各地におよび、数多くのダンサーや振付家、他ジャンルのアーティストとも共同作業を行ってきた。タイ古典舞踊の強力な地盤を持つ若いダンサーを育て、純粋に芸術的なパフォーマンスを創り出すために設立されたのが「ピチェ・クランチェン・ダンスカンパニー」だ。
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本作『No. 60』は、コーンにおける「テーパノン」と呼ばれる59の型を検証、分析し、そこから次世代へ向けた、新たな「60番目の型」を見つけようとする試み。ピチェ・クランチェンの長年に渡る取り組みが結実した作品とも言えるものだ。
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本作について、ドラマトゥルクのタン・フクエンは次のようなコメントを寄せている。「古典の硬直性を解体しながらも、『No. 60』はタイで受け継がれてきた感覚や精神を受け入れています。伝統と革新は対立するものではなく、ひとつの循環の中で複雑に行き来していることを明らかにし、この独裁の時代における個人の思考と機動力を後押しするのです」。
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この公演は当初、2021年12月に予定されていたものだが、新型コロナウイルスの感染拡大によって延期された。海外からの作品招へいやアーティストの来日延期・中止が相次ぐなか、ロームシアター京都の主催事業としては約15ヶ月ぶりの海外作品招へい公演となる。なお公演翌日の3月28日にはピチェ・クランチェンによるダンスワークショップも開催。公演とともに貴重な機会になりそうだ。
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