東京・日本橋浜町の「T‐HOUSE New Balance (ティーハウス ニューバランス)」は、築100年を超える蔵を再構築した空間だ。1階はニューバランスの最新の製品の販売や、コンセプトやテーマに基づいた展示を行うスペースとなっており、2階は新たなコンセプトやプロダクトを開発する「東京デザインスタジオ」としても機能している。
この「T‐HOUSE New Balance」で、アーティストユニット「Nerhol」としても活動するグラフィックデザイナー・田中義久と、「東京デザインスタジオ」によるインスタレーション「Yoshihisa Tanaka × Tokyo Design Studio cooperative research vol.02」が開幕した。会期は8月10日まで。
本プロジェクトは「東京デザインスタジオ」を主体とし、ニューバランスが商品を生産し販売していく中で排出される端材や廃材に対して、独自の観点によるサスティナブルな仕組みと新たな付加価値を加えるためのアップサイクルをテーマとして、アートに着目しながら研究を行ってきたものだ。
昨年11月に開催された第1弾では、「東京デザインスタジオ」と田中が、粉砕した端材や廃材を分量や配色によってアレンジし、溜め漉き(ためすき)の工程を経ることで、様々な柄の和紙を制作。その可能性を研究する過程を、ひとつのインスタレーションとして構成し、シューズを展開したパーツやシューズボックスなどのプロトタイプの展示によって可視化した。
今回の第2弾では、1回目の展示で好評を博した手漉き和紙のシューズボックスをアップデートするため、新たに機械漉きの和紙を制作。実用に耐えうる強度を実現する素材となった。風合いが豊かな手漉きの和紙も、シューズボックスのアクセントとしてロゴマークなどに使用される。
さらに注目したいのは、このシューズボックスを、スニーカーウォッシュサービスと組み合わせて流通させる試みだ。インスタレーションが展開される期間、「T-HOUSE New Balance」ではスニーカーウォッシュサービスを実施。「Licue & Sneakers」(渋谷パルコ)と協業して、ニューバランスのスニーカー製品を対象に有料で洗浄を行い、田中がデザインしたアップサイクルのシューズボックスに入れて返却される。
ほかにも、手漉き和紙を使用して制作されたスニーカーや、和紙素材の製作工程を知ることができる映像、シューズボックスに使用された素材のロールなどがスペースでは展示されている。
今回の取り組みについて、田中は次のように語る。「廃材を使って新たなものをつくるというよりも、新たなサイクルを次のノーマルとしてつくりたいと考えたので、いま履いている靴も大切にしてほしいと思った。きれいになったスニーカーを廃材から生まれたシューズボックスで受け取ることで、幸せな気持ちになってもらえたら。また、この体験を通じて、すでに存在するものを違う角度から見るという視点を持ってもらいたかった」。
また、「東京デザインスタジオ」のクリエイティブデザインマネージャーであるモリタニシュウゴは、田中との協業により生まれたものについて次のように語った。「このプロジェクトは明確なゴールがあるわけではなく、出てきた結果をもとにアップデートすることを積み重ねてきた。チームでここまで積み重ねてきた思考の流れをインスタレーションやスニーカーウォッシュという体験を通じて、幅広い人々に共有できれば」。
既存の価値観をアップデートさせる思考そのものを視覚化し、サスティナブルが叫ばれる時代に対する答えを模索するニューバランス「東京デザインスタジオ」の取り組み。ぜひ、現地で体感してほしい。