明治の洋画家・青木繁の親友だった梅野満雄を祖父に、埋没した作家を顕彰し世に問うたコレクター・梅野隆を父に持つ梅野亮。その画業の全貌を紹介する展覧会「浪漫の系譜 梅野亮展」が、長野県東御市の梅野記念絵画館で開催される。会期は10月4日〜2021年1月17日。
梅野記念絵画館は、1998年に梅野隆のコレクション430点の寄贈を受けて開館。そのコレクションは、「特異な業績を上げながら忘却されたり不遇な生涯を終えた作家で、忘れ去られるには惜しい作家を顕彰する」という方針のもと収集されたものであり、梅野満雄が知友の青木繁の遺作を永く守り続けたことから始まったという。
梅野隆の長男である梅野亮は1952年福岡県八女市生まれ。幼少期から父が所有する青木繁の作品に親しみ、青木の浪漫主義に影響を受けて作品制作を始めた。高校を卒業し美大への進学を目指していたが、日本画家・中村正義の助言を受けて自学自習により画家として立つことを決意し、20歳のときに渡仏。2年後に帰国し、個展を通じて作品を発表することで、次第に美術界の注目を浴びるようになったが、27歳の頃に筆を折り、30年後に画業を再開した。
本展では、梅野が青木の持つ文学性や浪漫性を引き継ぎながら、幼少期に読んだ童話などの影響を受けて空想上の神話の世界を描いた作品や、青春期に感じる不安や孤独を表現した作品、そして画業再開後、段ボールを用いたり、着彩した画面の熱処理や板材を彫ることで、画面効果にこだわって制作した作品など、58点の油彩や20点の水彩素描を展示する。
また、中村正義、田中岑、小杉小二郎、ミズ・テツオ、有元利夫、山下誠一など梅野と交流のあった作家の作品や、横山貞二、藤井蓮、林千絵、斎藤一郎、生井巌、山崎秀司、進藤裕代、武内明子など、現在活躍中で梅野が気になっている作家の作品も紹介。それらの作品を通じ、梅野の目指す美の志向性を探る。
なお会期中には、永井画廊代表・永井龍之介やミズ・テツオ、小杉小二郎をゲストに迎え、梅野とのギャラリートークや、梅野の公開制作などのイベントも開催。作家の浪漫あふれる詩情と天性の色彩の美しさを、ぜひ足を運んで目撃してほしい。