「自然と共生する美術館」として活動してきたセゾン美術館。偶然か必然か、本展のテーマである「共生」はコロナ禍の問題と重なった。
1970年代から「共生の思想」を提唱してきた黒川紀章とともに、建築運動「メタボリズム」に参加した槇文彦。槇に薫陶を受けた建築家・團紀彦は、2020年より軽井沢町の都市と自然環境に対する提言を行うマスターアーキテクトに就任している。「自然との共生」は團の建築の特徴でもあることから本展の企画が始まった。
展示内容は、團の「共生」に関連した作品や画像資料に加え、團との共同制作を重ねてきた大久保英治が新作を発表。昨年11月下旬から制作し、周りの草や内部に植生する苔など、自然の営みとの協働により完成した屋外作品だ。
「共生的社会」のセクションでは、館長・堤たか雄がキュレーションを務め、ブックアーティストの太田泰友が、本と建築の共通点を「宇宙観」に見出し、都市の建築に巨大な本が寄生する姿を作品化。さらにダンスの一形態のヴォーギングとSNSを基軸に、マイノリティの問題に切り込む磯村暖のインスタレーションを紹介する。
團は本展に寄せて、それぞれの文化的な固有性を出発点とし、その葛藤から生まれた共生の思想だけが未来への希望の光になるというメッセージを発表している。都市と自然、人と人、人と都市、人と自然の相克と共生について、展覧会会場に身を置き、自分自身への問いを発してみたい。
担当学芸員の石井正伸は、同展のみどころを次のように語る。「『都市は自然』という展覧会タイトルに示されているのは、都市=人工物と自然は対立概念ではないという考え方です。社会通念化している『共生』という概念を、團紀彦が建築家の立場から解釈し、自然、環境、文化、社会(建築、ジェンダー、インターネットなど)をテーマに、独自の『共生思想』を展覧会というメディアで表現します。『共生』という考え方が様々な問題を乗り越えていくためのキーワードになると思います。『私たちの未来のために、いま何をなすべきか?』を考えるきっかけとなればと思います」。