アートフェア東京を運営する一般社団法人アート東京が「日本のアート産業に関する市場調査 2020」を実施。日本全体の美術品市場規模を2363億円と推計した。2019年から約8.4パーセントの減少となる。
アート東京は2016年から毎年、アート市場規模の調査を実施しており、これが5年目。インターネットでのアンケート調査を昨年9月25日〜9月29日に行い、1次調査で有効サンプル数2万3706、2次調査で100サンプル(各地域別調査)を得た。
今回の調査で算出された日本国内のアート市場規模は、「美術品市場」「美術関連品市場」「美術関連サービス市場」の3つから構成されており、総計は3197億円。前年比で393億円のマイナスとなっている。
コロナ禍で強さ見せた百貨店
古美術や洋画・彫刻・現代美術などの「美術品市場」は2363億円で、2019年からの減少率は約8.4パーセントのマイナスとなった。しかしこの数字は限定的な減少と言える。アート・バーゼルとUBSは昨年9月にギャラリーに対する新型コロナウイルスの影響を分析する2020年の中期調査(60ヶ国以上795のギャラリーが対象)を発表しているが、同調査ではギャラリーの売上高は前年より平均で36パーセントの減少。この数字と比較すると、日本のマイナス幅がいかに小さいものかがわかる。
販売チャネル別では、これまでギャラリーと百貨店が2大チャネルとしてトップシェアを占めてきたが、その順位が逆転した。百貨店はコロナ禍にも関わらず昨年の567億円から数字を伸ばし673億円となり首位となったいっぽうで、国内の画廊・ギャラリーは昨年比約31パーセント減の672億円となっている。
なお「作家からの直接購入」は昨年の198億円から229億円へと増加。SNSの拡大が購入機会を後押ししているものと考えられる。
ジャンル別の美術品の市場規模は、昨年日本画が首位だったものの、今年は洋画が数字を大きく伸ばし、603億円(昨年は434億円)でトップに浮上。日本画は昨年の513億円から358億円へと数字を落とした。なお現代美術は294億円(平面264億円、立体・インスタレーション30億円)で、昨年の458億円から大きく下落している。
今回の調査では、展覧会と市場との関係性についても興味深いデータが見られた。美術品購入者と博物館・美術館へ多く訪問した人についての調査では、過去3年間に美術品を購入した人と、過去1年間に博物館・美術館を4回以上訪問した人で重複したのはわずか1.3パーセント。このことは、日本の展覧会来場者数は世界トップクラスではあるものの、それが市場形成には結びついていないという現状をあぶり出している。