SBIアートオークションの第37回モダン&コンテンポラリーセールが、東京・代官山のヒルサイドテラスにて6月19、20日の2日間にわたって開催された。注目の落札結果を、ピックアップしてお届けする。
今回のセールは、4月25日の開催を予定しながら、新型コロナウイルスの影響により延期となったオークションを、7月のオークションと統合し開催したもの。会場入口では検温と手指のアルコール消毒が実施され、会場ではそれぞれの椅子の距離を離すなど、感染症対策が実施されていた。
新型コロナウイルスの自粛要請明けということもあって人の入りも懸念されていたが、同オークションのマネージャー・加賀美令は、前回よりも遥かに多くの人が下見会を訪れており、自粛の反動が感じられると語った。
まず、1日目となる19日のオークションではエディション作品と、戦後の現代美術作品が出揃った。奈良美智、村上隆、KAWSといった人気作家のエディション作品が数多く出品され、予想落札価格も10万円台からと手頃なこともあって、会場、オンライン、電話ともに活発な入札が行われていた。
また、女性人物画で知られる中島健太の油彩画《Erosion》(2006)が予想落札価格50万〜80万円に対して110万円、白髪一雄の水彩画《魔界》(2003)が予想落札価格100万〜150万円に対して190万円で落札。また李禹煥(リー・ウーファン)の木炭で描いた《作品》(1979)は予想落札価格50万〜80万円に対し195万円の高値で競り落とされた。
2日目の目玉となったのは、カタログの表紙にも使用された奈良美智の犬小屋をモチーフとした大型の立体作品《Dogs from Your Childhood(Nara S-2000-005)》(2000)だ。予想落札価格は4000万〜7000万円で提示され、最終的に4600万円で落札。これが2日間のオークションを通じて最高額での落札作品となった。
近年のオークションで高い人気を集めている加藤泉の油彩画は、4点が出品されたが、いずれも予想落札最高額を100万円以上も上回る価格で落札。また、近年人気が急上昇している若手作家・井田幸昌の豚をモチーフとした井田幸昌《Pig》(2018)は、予想落札価格200万〜300万円に対して、5倍以上の高値となる1600万円で落札。会場は大いに盛り上がった。
風間サチコの大型木版画《汽笛一声(満鉄人現る)》(2007)も、予想落札価格30万〜50万円を大幅に上回る270万円で落札。昨年は個展「黒部市美術館開館25周年 風間サチコ展 コンクリート組曲」を開催、タカシマヤ美術賞も受賞するなど、活発な作品発表とともに評価が高まる風間の勢いを印象づけるものとなった。また、墨で描く抽象画が国内はもとより欧米でも評価されている篠田桃紅の《燦》(1997)は、予想落札価格120万〜180万円のところ、500万円で競り落とされた。
田中功起《覚醒 in th air》(2002)のような珍しい出品作もあった。爆発の瞬間をモチーフとした同作は、05年から07年にかけて全国を巡回した「GUNDAM 来るべき未来のために」展に寄せて制作され、4部構成の展示のうちの「戦争」の文脈で展示されたもの。50万〜100万円の予想落札価格に対して180万円で落札された。
2日目も1日目と同様、エディション作品に多くの入札が集まった。とくにバンクシーの作品は昨今の注目度と相まって高値をつけ、エディション500の《Grannies》(2006)は予想落札価格100万〜150万円に対して250万円で落札。エディション750の《Golf Sale》(2003)も予想落札価格100万〜150万円に対して380万円で落札された。
ほかにもミスター・ドゥードゥル、アドリアナ・オリバー、KYNE、小畑多丘、花井祐介といった人気作家のエディションが多くの入札を集めて会場を湧かせており、若い世代のコレクターたちが入札に参加する様子が見られた。
新型コロナウイルスによる影響もあり、セールの動向が注視されたSBIアートオークションだが、2日間に渡って活発なセールが行われ、会場でも賑わいを感じられた。
落札価格に取引手数料15パーセントを加えた本オークションの最終的な取引総額は、7億5345万7000円となった。