未知の音を奏でるバシェ音響彫刻。
修復に向けクラウドファンディング開始

フランスの彫刻家、バシェ兄弟が1960年代頃から制作した音響彫刻。40年以上にわたり解体されたままだった作品を修復するプロジェクトが東京藝術大学を中心に始動。クラウドファンディングにより資金調達を行っている。

修復された「高木フォーン」(大阪万博EXPO'70パビリオン)

 東京藝術大学は、READYFORとの業務提携により、クラウドファンディングプログラム「東京藝大×クラウドファンディング」を立ち上げた。その一環として、4月から「バシェ音響彫刻修復プロジェクト」の資金調達がスタートしている。 

 音響彫刻とは、フランスの彫刻家、フランソワ・バシェとベルナール・バシェの兄弟により、音響学の原理を応用して制作された独特の音を奏でるオブジェ。1970年の大阪万博では、鉄鋼館のプロデューサーであった作曲家・武満徹の依頼により17基が制作・展示された。

1970年万博当時の鉄鋼館ホワイエの風景 資料提供:大阪府万国博記念公園事務所

 その後、ほとんどが解体され、手付かずの状態で保管されていたが、2010年の万博記念公園のEXPO'70パビリオンのオープンを機に1基が修復され、その後京都市立芸術大学や、演奏家の永田砂知子、バシェ研究者のマルティ・ルイツらにより、4基が修復された。修復された音響彫刻が奏でる音は、先日発表された坂本龍一のニューアルバム『async』にも使用されている。

 今回新たに、東京藝術大学がこれまでの修復に関わってきた専門家とともにチームを結成。3オクタープのハープ状の振動部と11枚の音響増幅板からなる「勝原フォーン」とよばれる音響彫刻の修復を行うと同時に、残りの部材の調査とアーカイブを行う。修復完了後は、今年12月に東京藝術大学美術館陳列館にて展示され、関連企画として演奏会、ワークショップ、シンポジウムも開催される予定だ。

東京国立近代美術館「バシェ音響彫刻の秘密」ワークショップ

 支援は一口3000円から行うことができ、支援金額により、修復の状況を報告するニュースレターの受け取りから、完成の際のコンサートへの招待、小型の音響彫刻の贈呈まで、様々なリターンが用意されている。

 

編集部

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