谷口吉生建築の代表作である豊田市美術館。同館に隣接する「髙橋節郎館」が、1年の改修工事を経てリニューアルオープンする。
髙橋節郎館は、漆芸家・髙橋節郎(1914〜2007)の功績を広く紹介する美術館で、豊田市美術館同様、谷口建築だ。1984年に豊田市で開催された髙橋の個展がきっかけとなり、多数の作品が豊田市に寄贈されたことを受けて豊田市美術館とともに開館し、ひとりの漆芸家の作品を常設展示する国内でも数少ない貴重な館として30年にわたり活動してきた。
今回の改修は、2024年4月に隣接する敷地に開館した豊田市博物館と豊田市美術館との往来増加を見込んだもので、両館中間地点にあたる髙橋節郎館の入口などを増改築し、来館者の利便性を高め、回遊性の向上や利用者数の増加を目指すもの。
具体的には、髙橋節郎館の屋外中庭を室内化し、エントランスホールを増築(約140平米)。また風除室、廊下、ワークショップルーム改修(500平米)・建物外周部及び博物館2階エントランスへの歩道整備(約180メートル)・展示室内壁面(800平米)などの改修が実施された。
新たなエントランスホールは各空間をつなぐユーティリティスペースとして機能する場所であり、増築された屋根は軽量な屋根架構(張弦梁)。ロビーとしての落ち着きを感じられるスペースとなるよう、照明効果を備えた軽快で透過性のある光幕天井が設置されている。
なお旧エントランスホールは展示室へと改修され、展示スペースの増床が実現。展示活動の充実も期待される。
リニューアルオープンを飾る展覧会は、「髙橋節郎展-我逢人 われ人に逢うなり-」(1月18日〜5月18日)。髙橋の「人」と「作品」をあらためて紹介するとともに、結城素明や藤田嗣治、熊谷守一、吉原治良など、髙橋の芸術性に影響を与えた人々にも焦点を当てる。