「情報」と「ゴミ」の問題をテーマに、70年にわたって創作を続けてきたアーティスト・三島喜美代が6月19日に逝去した。91歳だった。
三島は1932年生まれ。54年から69年まで独立美術協会に所属し、活動初期では具象画を発表していた。具体美術協会の吉原治良に師事した画家・三島茂司に出会いその影響を受け、60年代には新聞や雑誌などの印刷物をコラージュした作品やシルクスクリーンを用いた平面作品を制作。しかし70年代に入ると表現媒体は一転。シルクスクリーンで印刷物を陶に転写して焼成する立体作品「割れる印刷物」を手がけ、大きな注目を集めた。日々発行され、膨大な情報をもつ印刷物と、硬く安定しているかに見えながら、割れやすい陶という素材を組みあわせることで、氾濫する情報に埋没する恐怖感や不安感を表現した。
その後は、空き缶や段ボールなど身近なゴミを題材に陶で再現した作品、産業廃棄物を高温で処理した溶融スラグを素材とする作品を発表。近年は、自ら集めた鉄くずや廃材を取り込んだ作品を制作していた。
2021年には森美術館の「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」に参加し、高い注目を集めたことは記憶に新しい。22年に毎日芸術賞を受賞。翌23年には岐阜県現代陶芸美術館において自身初となる美術館個展「三島喜美代-遊ぶ 見つめる 創りだす」を、今年に入ってからは東京の美術館では初となる個展「三島喜美代―未来への記憶」を練馬区立美術館で開催するなど、精力的な活動を見せてきた。