長年広告業界で活躍し、現在はアーティスト・写真家として活動している高松聡。民間人として世界初となる30日間の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在を行い、超高解像度で地球撮影を写真、動画、360度VR動画で実施する宇宙アートプロジェクト「WE」を発表した。
高松は1963年生まれ。筑波大学基礎工学類を卒業後、株式会社電通に入社。世界初の宇宙ロケCMを2001年、ポカリスエットで実現し、2005年には日清カップヌードル「NO BOREDR」で平和を希求する2年間のキャンペーンを行った。また、2002年の日韓ワールドカップでは世界初のFIFAパブリックビューイングを国立競技場で実現し、15年にはロシア「星の街」で8ヶ月間にわたる宇宙飛行士訓練を受け、20年には写真家として個展「FAILURE」を開催した。
こうした宇宙空間でのCM撮影経験や社会的議題への関心、宇宙飛行士訓練、そして写真家としての経験を統合して、今回のプロジェクトWEが立ち上がった。
WEは「World Environment」「War Ends」の頭文字でもある。同プロジェクトでは、宇宙から地球を見る、「オーバービューエフェクト」と呼ばれる体験を地上で再現することで、「地球のサステイナビリティへの覚醒」と「戦争のない地球を希求するムーブメントを形成する」ことを目指している。
それを実現するため、高松は米国ヒューストンのAxiom Space社と30日間滞在できる宇宙飛行の座席予約契約を完了。同社への第1回目の支払いが完了し、今後は世界中の個人、ブランド、財団等に協賛を依頼し必要経費のファンドレイジングを行うという。
撮影では、複数台の高性能カメラをスタックして同時運用し、3億画素を有する静止画、24K動画、そしてHMDで60PPDを超える360度動画再生ができるVRなど様々なコンテンツを撮影予定。また、「地球を見る」体験装置としてWEパビリオンも構築し、撮影された写真、動画、VRをこのパビリオンで展示する予定だ。
同パビリオンでは、世界にかつてない規模の横幅100メートルにおよぶディスプレイを設置し、マシンラーニングさせたAI超解像処理で制作される地球を映し出す48K相当の映像を上映。3メートルの距離でこのディスプレイを見ると、それは400キロメートル上空のISSから地球を見たときの体験とほぼ同じ視覚体験となるという。また、VR展示では人間の細部認識能力を超えると言われる60PPD以上の映像を見ることができる。
高松はステートメントで、同プロジェクトについて次のようにコメントしている。「サステナビリティの本を読むことで、その重要性を理解することはできるが、地球という生命体を直感的に捉えることは難しい。『見る』ことで初めて地球を感じ、地球の未来を考えることができるのではないだろうか。本プロジェクトは映像体験によるサステナビリティの啓蒙プロジェクトでもある。そして私達の故郷である地球で戦争が無くなることを強く希求する平和プロジェクトでもある」。