日本の風景や伝統的な造形に見られる多様な「そり」と「むくり」を制作の根底に据え、60年以上にわたり作家活動を続けてきた彫刻家・澄川喜一(すみかわ・きいち)。同氏が今年4月9日に死去していたことを、東京藝術大学が発表した。91歳だった。
澄川は1931年5月2日島根県生まれ。東京藝術大学で平櫛田中と菊池一雄から塑像と具象彫刻の基礎を徹底的に学び、同大卒業後は67年より同大教員。美術学部助教授、同教授、同学部長を歴任し、95年から2001年まで学長、01年から23年までは東京藝術大学名誉教授。また文化功労者(2008)、文化勲章(2020)を受賞しており、日本芸術院会員だった。
澄川はキャリア当初に具象彫刻を手がけるも、それを一度廃棄し、抽象彫刻に移行。木や石など自然素材に対する深い洞察を経て、日本固有の造形美と共鳴するような抽象彫刻「そりのあるかたち」シリーズを手がけ、日本を代表する作家となった。
80年代以降は野外彫刻や環境造形の分野にも活動の幅を広げ、日本国内には澄川の手による公共彫刻や記念碑、環境造形などが多数存在する。代表的なものとしては「風の塔」(東京アクアライン川崎人工島)や、東京スカイツリーなどがある。近年では、2020年に横浜美術館で大規模個展「澄川喜一 そりとむくり」が開催された。