2023.5.19

第14回上海ビエンナーレがアントン・ヴィドクルをチーフ・キュレーターに任命。テーマは「コスモス・シネマ」

オンラインのアートジャーナル「e-flux」の創設者として知られるアントン・ヴィドクルが、第14回上海ビエンナーレのチーフ・キュレーターに起用された。

アントン・ヴィドクルが「Unexpected Encounters」展(ラトビア現代美術センター、2019、リガ)にて Photo by Margarita Ogoļceva

 中国でもっとも長い歴史を持つ現代アートのビエンナーレ「上海ビエンナーレ」。今年11月より開催される第14回の同ビエンナーレが、アントン・ヴィドクルをチーフ・キュレーターに任命することを発表した。

 1998年に設立されたオンラインのアートジャーナル「e-flux」の創設者として知られているヴィドクル。1981年、両親とともにソ連からアメリカに移住し、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツで学ぶ。2012年には初めて宇宙論の哲学に触れ、その後、シベリア、カザフスタンなど旧ソ連の各地を訪れ、宇宙主義の科学者、思想家、芸術家が残した痕跡を調査し、7本の短編映画を完成させた。

 ヴィドクルは、e-fluxで宇宙主義に関する歴史的な文章の英訳などに取り組み、ロシアの画家アルセニー・ジリヤエフと共同でこのテーマに関する研究のオンライン出版とアーカイヴ・プラットフォーム「Institute of the Cosmos」を立ち上げた。その作品はこれまで、ドクメンタ12やヴェネチア・ビエンナーレ、ポンピドゥー・センター、テート・モダンなどの芸術祭・施設で紹介されてきた。

 今回のビエンナーレのテーマは「コスモス・シネマ」。同テーマについて、ヴィドクルは次のように述べている。「見上げることができるようになってから、人類は空を観察し、地球上の生活と大気圏外の出来事との関係を直感してきた。星や惑星の解釈は、私たちの起源物語、宗教、時間のシステム、ナビゲーション、農業計画、科学、社会秩序など、人間生活の組織における重要な側面のほとんどを生み出した。人間以外の生命体も同様に、太陽、月、天体の影響を受けている」。

 今年のビエンナーレでは、ヴィドクルはこのテーマをもとに「地球上の生命とそれを育み、条件づける宇宙との関係について、アーティストたちがどのように理解を深めてきたか」を考察するという。「上海は、哲学的、芸術的に宇宙論に取り組んできた中国の豊かな歴史、東アジアと世界をつなぐコスモポリタンな歴史、そして現在、急速に拡大する民間宇宙プログラムの主要拠点のひとつとなる都市として、このようなプロジェクトに非常に適しているのだ」。