日本の文化行政を担う文化庁。その令和5年度の当初予算額(案)が昨年12月23日に閣議決定された。5年度予算は1077億円となり、令和4年度に比べ1億円(0.1パーセント)の増額となる。今回の予算で注目すべき点をまとめた。
まずもっともインパクトがあるのは、予算で冒頭に掲げられている「文化芸術の創造的循環の創出(我が国の文化芸術のグローバル展開等)」(14億円)だ。これは、令和4年度に実施されていた8つの事業を「エコシステム形成」という新しい観点のもとにまとめたもの。文化庁は、昨年3月末にとりまとめられた「文化審議会第1期文化経済部会報告書」の内容を積極的に推進していきたい構えだ。
なかには「我が国アートのグローバル展開推進事業」(1億5200万円、新規)や「世界から⼈を惹きつけるグローバル拠点形成の推進」(5億2700万円、新規)なども見られる。アジアのアートシーンで韓国やシンガポールが勢いを増すなか、後れを取る日本にとってこのような事業予算の確保は喫緊の課題と言える。
文化庁直営事業を独立行政法人国立美術館へ移管することも今回のポイントとなる。例えば、「⽇本映画の創造・振興プラン」(12億2900万円)のうち「ロケーションデータベースの運営」「アーカイブ中核拠点モデル事業」などは国立映画アーカイブに移管される。
昨年、大きな話題となった文化庁メディア芸術祭の閉幕。その今後も予算から読み取れる。上述「世界から人を惹きつけるグローバル拠点形成の推進」のなかに、「日本文化のグローバル展開に資する『新たな価値』の発信」(3000万円)が新たに計上された。メディア芸術祭の後継ではないものの、メディア・アートやマンガ・アニメを含むポップカルチャーを中⼼に、国際的なアートフェスティバルの開催などを視野に入れた取り組みを持続的に⾏うための準備事業となる。これらがどのように結実するかは注視する必要があるだろう。
加えて、「情報流通基盤の整備(メディア芸術データベースの整備)」や「メディア芸術の国際発信等」は、独立行政法人国立美術館内にある「国⽴アートリサーチセンター」 が令和5年度より事業を実施していくこととなる。