ヴェネチア・ビエンナーレ財団が、2022年に行った第59回国際美術展や第79回ヴェネチア国際映画祭など5つのフェスティバルにおいて、カーボンニュートラル認証を取得したことを発表した。
今回の認証は、国際規格PAS2060に準拠して実施され、国連気候変動枠組条約で認定されているイタリアの組織RINAから受けたもの。同財団は21年の第78回ヴェネチア国際映画祭においても同認証を取得しており、これまではCO2排出量の削減と、カーボンクレジットの購入による残留CO2排出量の相殺の二方向でカーボンインパクトの中和に取り組んできた。
CO2排出量を削減するため、同財団は「イベントのライフサイクルのあらゆる段階で環境持続性の原則を取り入れると同時に意識を高め、フェスティバルに必要な商品やサービスの供給者を巻き込んでいる」とし、次のようなアクションを行っているという。
・再生可能なエネルギー源を使用する
・使用材料の削減、使用済み材料のリサイクル促進
・展示材料や設備の再利用
・ゼロキロメートル食品を優先し、フードサービスにおけるベジタリアンの選択肢を増やす
・移動経路を最適化し、物流負荷を低減する
また今後、同財団はこれらの対策の効果を定着させるために強化するとしつつ、一般市民の意識を高めるためのコミュニケーション・キャンペーンにも取り組む予定だという。
気候変動の影響下、環境保護を名目とした活動家による美術館襲撃事件が昨年ヨーロッパを中心に頻発し、美術界を大きく震撼させた。それに対して国際博物館会議(ICOM)は声明文で、「気候変動は自然災害や異常気象による保存状態の維持の困難化など、有形・無形の文化遺産、博物館やそのコレクションにとって脅威となりつつある」とし、気候変動対策のために団結することを呼びかけている。
また、ロンドンを拠点にするギャラリストなどの有志のグループは非営利団体「Gallery Climate Coalition(ギャラリー気候連合)」を立ち上げており、スタッフの移動や作品の輸送、梱包など、アート業界の各段階におけるCO2の削減に関する情報や対策を公開。業界人は、「カーボン計算機」などのツールを通して自らの活動の影響を把握し、それらの影響を削減するための対策を講じることができる。
記録的な熱波や寒波などの極端気象が続き、気候変動が喫緊の課題になっているいま。こうした課題の現状を認識し、着実な行動を起こすことが必要だ。