女装の男娼としてドラッグと売春の少年時代を過ごし、18歳でその半生を綴った「自伝」を発表した、「謎の天才美少年作家」J.T.リロイ。1996年に『サラ、神に背いた少年』が出版されるとショッキングな内容とその文章力が話題を呼び、続編『サラ、いつわりの祈り』は映画化。セレブとも交友するカリスマ的存在となった。
しかし2006年、「ニューヨーク・タイムス」が、リロイは実は架空の人物で、小説を執筆していたのは当時40歳の主婦、ローラ・アルバートであったという、驚きの事実を報じた。アルバートは10年もの間、自らのパートナーの妹を男装させて「リロイ」とし、自身が創作した小説を自伝として発表していたのだ。
本作は、リロイをとりまくセレブたちの証言と、ローラ自身の言葉によって、この事件の真実に迫るドキュメンタリー。コートニー・ラブ、ビリー・コーガンらとの通話音声や留守電メッセージの記録を参照して事の顛末を追いながら、誰もの心に潜む「もうひとりの自分」の存在を浮き彫りにする。監督は、ドキュメンタリーを数多く手がけるジェフ・フォイヤージーク。