昨年8月、台風9号によって海に流され破損した直島のランドマーク的な存在である草間彌生の《南瓜》(1994)。約1年を経て、その復元制作された作品が10月4日にふたたび公開された。
同作は、1994年にベネッセハウス ミュージアムで開催された「Open Air'94 "Out of Bounds"―海景の中の現代美術展―」のために制作設置されたもの。草間にとって初めて野外での展示を念頭につくられた作品群のひとつである本作は、高さ2メートル、幅2.5メートルというサイズを有し、それまでに制作された南瓜彫刻のなかでは最大級のものだった。
昨年、同作が台風で波にさらわれる映像がInstagramなどを通して世界中に拡散され、国内外のアートファンのなかで大きな衝撃を与えたとともに、世界中から作品の状態を気遣う声も作品の所蔵先であるベネッセホールディングスに多く届いたという。
今回の作品は、破損した作品と同じかたちやサイズでつくられた新作となる。素材も旧作と同じく繊維強化プラスチックや金属、ウレタン塗装を使っているが、災害時に備える対策の一部としては内部が一層強化されているという。
10月4日に行われたオープニングセレモニーで、ベネッセホールディングス 本社・直島統轄部の部長である高橋正勝は、「(1994年の作品は)設置以来、海を通して直島と世界をつなげていくという意味合いを持って展示してきた。直島、さらには瀬戸内海のシンブルとして世界中の皆さまに知られる作品になってきた」と振り返りつつ、復元制作された作品について次のように語っている。
「昨年の大きな教訓を生かして、台風などの災害に非常に強い南瓜として(草間彌生の制作チームに)つくっていただいた。また、我々も万が一のときのためにしっかりと対応できる対策をとって、二度と昨年のことにならないように、皆さまにご心配をかけないように徹底していきたいと考えている」。
具体的な対策について、株式会社直島文化村/ベネッセハウスの代表取締役社長である笠原良二は、台風が近づいた際に、これまで以上に早い段階で、作品を適切な場所に避難させるような対策を講じるとしている。
直島を含む瀬戸内海の島々を会場に、3年1度に開催される瀬戸内国際芸術祭2022の秋会期は9月29日より始まっている。また、日本の入国制限緩和を受け、これから外国人観光客の増加も見込まれている。
笠原は、草間の《南瓜》がある風景は新たな日常になっており、約1年間の空白を経てふたたび日常に戻ったことを嬉しく思っているとしつつ、「瀬戸内の風景を草間さんの南瓜の作品とともに見ていただいて、両方の素晴らしさを改めてご覧いただけたら」と期待を寄せている。