文化芸術分野ではおろそかにされがちな「契約」。これを是正するため、文化庁は27日付で「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)」を公表した。5月23日から6月13日まで行われたパブリック・コメントの募集には141件(うち団体は32件)が集まったという。
このガイドラインの背景にあるのは、文化芸術分野における契約上の課題だ。文化庁によると、契約は当事者間の口頭による契約が多く、契約書がある場合でも一方的な内容であれば、芸術家等が不利益を被ったりトラブルに発展するケースがあるという。また、分野や職種、案件によって業務内容や契約期間が異なるため、契約書作成に係る事務負担が大きいという文化芸術分野ならではの課題もある。
ガイドラインではこうした状況を改善するため、「契約内容明確化のための契約の書面化」「取引の適正化の促進」を提言。契約内容を明文化するとともに、報酬や取引条件について芸術家らが協議・交渉しやすい環境を整備していくことや、専門性や提供する役務に見合った取引の適正化を促進していくことが必要だとしている。
しかしながら、こうしたガイドラインがつくられるだけでは不十分だ。文化庁も「官民一体となって、中長期的に継続して取り組む必要」を訴える。行政による相談窓口の設置や法令違反した事業者への適切な対応を求めるいっぽう、事業者・業界団体にもルールづくりや環境整備を求める。
なお、文化庁ウェブサイトでは各ジャンルに応じた契約書の雛形も公開されている。当事者である文化芸術関係者は一読をおすすめしたい。