前川國男建築の東京海上日動ビル、存続を。前川事務所OBら「建築遺産として残すべき」

解体と新ビルの建設が発表されている前川國男設計の東京海上日動ビル(東京・丸の内)。この存続を願う会が、建築家会館で記者会見を行った。

東京海上日動ビル

 近年、世田谷区民会館や原美術館、宮城県美術館など、様々な近代建築が解体またはその危機にさらさる事態が起きている。そうしたなか、すでに解体とレンゾ・ピアノによる新ビル建設が発表されている東京・丸の内の東京海上日動ビルの存続を願う「東京海上ビルディングを愛する会」(会長:奥村珪一)が建築家会館で記者会見を行った。

 この会は、モダニズム建築の大家として知られる前川國男が設計した東京海上日動ビルの存続と、解体計画の変更を求めることを目的とした会。前川事務所のOB、約20名が主体となって2020年10月から組織として活動をスタートさせ、今年3月に正式に設立した。

 同会は、丸の内の超高層化の先駆的存在であり、街に接続するように大きな広場が設けられた東京海上日動ビルを、「建築遺産として残すべき日本文化の大切な作品」と評価。東京海上ホールディングスは新・本店ビル計画のコンセプトにおいて、「サステナブルな社会の実現や地域社会の発展に貢献」としているが、築50年足らずの本館と86年に建てられた新館を取り壊すことはSDGsの精神に反するのではなかと疑問を呈している。

東京海上日動ビル

 解体計画について、同会はビルの保存改修が新築よりもコスト面で有利であること、防災対策とデジタル対応が改修で可能であることなどを提案しており、広く賛同を呼びかけている。

 また、東京海上に対しては、「東京海上ビル本館(1974年)の存続に関する公開質問状」を12月17日付で提出。現在回答を待っているところであり、回答は公開予定だという。

 今後については、同ビル保存改修を目標とした新たな会を設立し、前川事務所OBだけでなく、広く市民の参加を呼びかけるという。奥村会長は「安易に建築を壊すことが平気になっている。この世論を直さないと何も蓄積されない」としており、優れた建築作品が文化遺産として評価される社会の仕組みづくりについても一石を投じたいとしている。

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