アメリカのバイデン大統領は今年4月、アフガニスタンの駐留米軍を9月11日までに完全撤退させることを表明。米軍の撤収に伴い、アフガニスタンの軍事組織・タリバンは次々と国内の主要都市を制圧し、8月15日には首都カブールに迫り、アフガニスタン全土を実質的な支配下に置いた。
こうした状況下、アフガニスタン国内の博物館や遺跡、美術品の保護は国際的に広く懸念されている。
イスラム原理主義を唱えるタリバンは、人間や動物の姿をした彫像や美術品はイスラム教への冒涜とみなした。2001年には約1500年の歴史を持つバーミヤンの仏像や、カブールの博物館にある多くの美術品や彫像を破壊しており、世界から強く批判されている。
『ナショナル ジオグラフィック』の報道によると、カブール郊外にある中央アジア有数の古代仏教寺院であるメサイナックは、すでにタリバンによって完全に支配。ここには数多くの仏塔や仏像とともに、遺跡から発掘された2500枚以上のコインを含む計1万点の遺物が保存されている。また、ヘラートの城塞内にある新しい博物館をはじめ、カンダハル、ガズニ、バルクにある博物館やコレクションもタリバンによって管理されているという。
アフガニスタン政府は、ヘラートやカンダハールなどの都市から遺物を輸送して保管することを計画していたが、ここ数日でその抵抗が急遽崩壊したため、そのような行動はできなくなった。8万点以上の工芸品コレクションを持つアフガニスタン国立博物館館長のモハマド・ファヒム・ラヒミは同誌の取材に対し、「スタッフと収蔵品の安全に大きな懸念を抱いている」と語っている。
タリバンが今年2月に出した声明では、すべての人に「遺物をしっかりと保護し、監視し、保存する」義務がつけられており、遺物の発掘や販売、そして海外への輸送が禁止されている。しかし、文化遺産関係者のあいだでは、タリバンがこれらの約束を守るかどうかは疑問視されている。
この危機的状況に対し、ICOM(国際博物館会議)は8月17日にステートメントを発表。「アフガニスタン全土のすべての当局が、民族、性別、政治的意見の区別なく、すべてのアフガニスタン国民のために、この豊かな有形・無形の遺産を信頼して保持・保護している博物館、そのコレクション、遺産地、そして遺産専門家の品位を引き続き尊重すること」と、「遺産保護の国際的な義務を継続して遵守すること」を期待するとしている。
なおICOMは、現在、略奪や不正な取引の脅威にさらされているアフガニスタンの文化財をツイッターのスレッドで発信している。そのリストはこちらから。
‼️THREAD OF AFGHAN ANTIQUITIES AT RISK‼️
— ICOM (@IcomOfficiel) August 17, 2021
Afghan heritage is currently under threat of looting and illicit traffic. Help us protect the identity & history of Afghan people by sharing this thread.
Categories of Afghan objects at risk⬇️
–images depict examples, not stolen objects–