中国人アーティスト・宋拓(ソン・タ)が大学キャンパスで5000人もの女子大学生を撮影し、その容姿を「もっとも美しい人からもっとも醜い人まで」ランク付けした映像作品が、中国のネット上で大きな議論を呼んでいる。
作品のタイトルは中国語で「校花(学校の花)」となっているが、英語では「Uglier and Uglier(より醜く)」と名付けられている。7月11日まで上海の美術館・OCAT上海館で開催されている展覧会「The Circular Impact:Video Art 21」に出品されていたが、強い批判を受け、同館は作品を取り下げたうえで展覧会も一時的に中止した。
同館は、今月18日に中国のSNS・Weiboに投稿した謝罪文で次のように述べている。「皆様からご批判をいただき、すぐに作品の内容と作家の説明を再検討しました。作品のコンセプトや英語のタイトルが、女性を蔑視し、侮辱するものであること、また作品の撮影方法にも侵害の疑いがあることがわかりました」。
同作は、2013年に北京のユーレンス現代美術センター(UCCA)で初めて展示されたが、当初は大きな反応がなかった。19年にVICE中国のインタビューで、宋は女性のアシスタントを雇ってキャンバスで通りがかった女性大学生を撮影したとし、撮影された映像は3人のアシスタントに「もっとも美しい」から「絶対に許せない醜さ」までのフォルダに分類する作業を手伝ってもらったと語っている。
分類された約5000点の写真や動画を使い、宋は自分の目から見て美しい順にランク付けして8時間の映像作品に編集。宋によると、作品は開館から閉館まで、1日1回のみ全編が上映。宋の言う「美しい順」に女性が映し出された。
美術手帖は、OCAT上海館と宋拓にコメントを求めたが、美術館のスポークスパーソンは「現時点ではお返答できません」と答えた。
ニューヨーク・タイムズの報道によると、中国の美術関係者のあいだでは、今回の事件に対して様々な意見が飛び交っており、OCAT上海館の対応については、少なくとも宋の作品と世論のあいだで議論を進めるべきだというような懸念する声があったいっぽうで、女性蔑視はアート界に深く根付いた問題であり、美術館は最初から宋の作品を展示すべきではなかったという意見もあったという。
同紙の中国語サイトが13年に掲載したUCCAの展覧会レビューでは、本作について宋はカメラを権力の「武器」として使っていると指摘し、次のような懸念を表した。「アートがポリティカル・コレクトネスに過剰に固執することには違和感があるが、人間の普遍性という基本的な価値に従うことに関しては、アーティストに免罪符はない」。