美術館連絡協議会(美連協)が、2022年度よりその事務局業務を停止することを明らかにした。
美連協は「全国の公立美術館が連携を図り、芸術、文化の向上および発展に資することを目的に」(公式サイトより)1982年12月に設立された組織。読売新聞社と日本テレビ放送網等の呼びかけにより、発足当初は35の加盟館だったものの、現在は47都道府県の公立美術館約150館が加盟する巨大なネットワークとなっている。
美連協の業務は、「展覧会の共同企画や巡回展開催」「美連協大賞(大賞・優秀カタログ賞・優秀論文賞・奨励賞)」「海外研修派遣」「美術館活動助成」「美連協ニュース」の5つ。
このうちもっとも大きな役割を果たしているのが「展覧会の共同企画や巡回展開催」であり、今回の事務局業務の停止はこの部分から美連協が手を引くことを意味する。
美連協事務局は事務局業務停止の理由について、美術手帖の取材に対し「加盟館が発足当初の35館から149館にまで増え、事務局体制の見直し時期にあると考えていたところ、新型コロナウイルスの感染拡大で美術界全体が痛手を受けました。こうした事態も踏まえ、事務局では、これまで公立美術館に限っていた同協議会の活動を見直す必要があると判断しました」と回答としている。
では美術館にとってはどのようなインパクトが予想されるのか? ある美術館の学芸員は「共通経費をとりまとめる業務」の停止の影響が大きいと語る。「公立美術館は館によって予算の執行方法が様々。これまで美連協が各館の予算を預かり、“お財布係”を担ってくれていたから、巡回展が可能だったといっても過言ではない。美連協と同様に、複数の館の予算を管理して巡回展を可能にしているのは、展覧会企画会社や、マスコミと美術館による実行委員会だが、いずれもある程度集客が見込める企画しか対象にならない。メセナ的な性格を持つ美連協のおかげで開催できていた、集客は厳しくても、学芸員の地道な調査研究を実らせるタイプの展覧会は難しくなるかもしれない。そうした展覧会を今後も実現するには、調査研究面だけではなく、運営面でも美術館どうしのネットワークを構築していかなければならないだろう。展覧会という予定調和に収まらない事業に寄り添い、マネジメントやコーディネートを行えるような人材を育てていく必要もある」。
ただ美連協は今後、「公・私の別なく美術館を支援できるよう、業務内容や組織体制を大きく見直したい」ともしており、新たな展開も予期させている。いずれにせよ、巡回展に与えるインパクトは少なくなさそうだ。