紛失問題報告書に関して、アーツ前橋館長の住友文彦が反論。報告書内容と作成過程の問題点を指摘

アーツ前橋の作品紛失について、「アーツ前橋作品紛失調査委員会」が公開した調査報告書。この内容について住友文彦館長が25日に記者会見を行い反論を行った。

アーツ前橋

 借用6作品の紛失を公表した群馬・前橋のアーツ前橋。その原因を検証する調査のために設置された「アーツ前橋作品紛失調査委員会」が調査報告書を公開したが、この内容について住友文彦館長が25日に記者会見を行い反論。会見原稿も公開した。住友館長はこの原稿で、報告書の記載内容に相違点があり、またその作成そのものの問題点を指摘。さらに報道などで出ていた「隠蔽」「嘘」という⾏為はなかったことを明言した。

 住友館長は作品の管理についての問題については、⾃⾝も責任を感じているとして、著作権者に対しての謝罪を述べた。いっぽうで、今回の報告書が貴重な作品が失われたことについての原因を解明する研究がほとんどされていないことを指摘。著作権者への報告の遅れは、⾏政職員に原因があったのではなく、館⻑と学芸員が悪かったという点が紙⾯のほとんどを占めていることを問題視した。

 住友館長が具体的に指摘した報告書の問題点は大きく3つ。

 1つめは、住友館長と担当学芸員が当時の文化国際課長と副館長に提案した資料に記載されていた、紛失後の対応①②についてだ。

 ①作品リストを紛失した6作品を除いたものに更新して著作権者に渡し、紛失した作品は初めから借用していなかったと伝える、あるいはとくに連絡をせず著作権者の反応を見る。

 ②2022年に当該作家の企画展を開催することを著作権者に提案し、企画展終了後、紛失の事実を伝えるかどうか判断する。

 住友館長は会見でこの①②についてそれぞれ反論。会見原稿によれば①は「作品を預かる際に作成したリストが正確でなかった可能性がある、と担当が感じていたため(実際に多くの作品をデータ化する際に間違いはありえる)、もともと紛失したと思われた作品は預かっていなかった可能性を想定したもの」とした。②は「初めの把握が間違っていたなら、という想定です。つまり、直後の2⽉、3⽉の時点では、複数の原因が考えられるが特定できず、あると思っていた作品がない、しかも作品が無くなるという状況はスペースにゆとりがあったことからも⾮常に考えづらい、そうしたなかでどんな可能性があるのかを検討していました」 とした。

 これらの検討の選択肢には「原因不明なまま、作品が⾒つからない事実だけを伝える案」も含まれていたとし、また①と②は数の把握ミスはないと確認したことで実⾏しておらず、隠蔽や嘘の事実はないとしている。

 2つめが、5⽉19⽇に市⻑と館長が話した内容について「館長や学芸員といった専⾨職の⽴場から遺族への説明をおこなうべきという主張を⾏政管理職が認めないので、その点を市⻑に了解を取った、というのが正確な内容」としている。

 しかしながら、報告書に書かれた事実経過を見ると、20年5月には市長から、6月には部課長や副館長から、館長に対して遺族に事実を報告する指示が幾度も出されていることになっており、この点で住友館長の主張と報告書の内容には齟齬が生じている。

 3つめは、著作権者への最初の報告が7月13日と、市⻑と了解した5月から時間が経ってしまった点についてだ。これについて住友館長は「著作権者のなかに医療関係者がいたのでもっと早く会う約束を⼊れていましたがキャンセルになっていたこと、それと教育委員会の不⽤品処分以外の無くなった原因調査が進まなかったことがおもな原因」とした。住友館長によれば、最初の報告のあとも計4回直接会って著作権者に説明しており、その内容について著作権者は理解を示して引き続きの調査を認めている。住友館長はこうした経過が報告書から排除されていることについて問題視した。

 さらに住友館長はこの調査報告書が外部委員2名に共有されないまま公表されたことも問題視した。また、レポートは、教育委員会の不⽤品処分のために作品の区分けをおこなった⾏政職員が作成しており、職員を擁護するような⾏政職員寄りの偏向した内容だということを、外部委員2名が指摘しているが、それが反映されていないとした。

 最後に住友館長は報告書について、「本来は保管場所の整備や職員の雇⽤など組織としての構造的な問題を解決するべきところを、別の問題に眼を向けさせるために報告書が作成された」と所感を述べた。加えて、「教育委員会や⾏政職員を擁護するために、館⻑と学芸員の対応を問題視するこのような報告書が作成されたのであれば、そのために不利益を被ることをめぐって裁判等で訴えるつもり」と、訴訟の可能性も提示した。

 今回の報告書についての住友館長の主張をまとめたい。

 まず、調査報告書の報告内容の取捨や誇張が意図的に行われ、さらに外部委員や学芸員の意見も反映されていなかったということ。これが市の組織としての構造問題や教育委員会・⾏政職員の責任問題から目を背けさせ、館長や学芸員に責任を転嫁するものだと指摘している。そして、調査報告書では、作品そのものがなくなった原因を究明する調査がほとんどされていないという立場をとる。

 館長と市それぞれの調査過程や発表方法に対する見解の齟齬による混乱が続くことで、休館中のアーツ前橋の今後が憂慮される。

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