⽂化庁は「⽂化庁アートプラットフォーム事業」として、3月15日に⽇本の現代アートに関する基盤情報を国内外へ発信する日英バイリンガルのウェブサイト「Art Platform Japan」のベータ版を一般公開した。
「⽂化庁アートプラットフォーム事業」は、日本における現代アートの持続的発展を⽬指し、2018年5⽉に始動した事業。現代美術関係者の意⾒を集約し、⽇本⼈及び⽇本で活動する作家とその作品の国際的な評価を⾼めるための取り組みを続けてきた。
このたび公開された「Art Platform Japan」は、おもに3つのコンテンツからなる。
ひとつめが全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」。これは、⽇本全国の美術館に収蔵されている作品情報の可視化と、その国際共有化を⽬指し、全国の美術館や博物館の協⼒を得て収集した美術館収蔵品データを集約したデータベースだ。3月15日時点では全国85館、約7万件の収蔵品情報および1243件の作家情報を公開している。今後、2022年度末までに200館以上、約10万件の公開を⽬指し情報を拡充する予定だ。
ふたつめが英訳⽂献。⽇本の現代美術の国際的な評価を⾼めることにつながる研究を喚起するため、とくに需要が⾼いと考えられる戦後美術を対象とした未英訳のテキスト(単⾏本、評論、学術論⽂、カタログ寄稿⽂等)を英訳し、PDFで公開。2022年度末までに、約100本の⽂献を翻訳対象として選定し、翻訳が終了したものから随時掲載予定となっている。
3つ目がプログラムのアーカイヴだ。これまでに開催されてきた国際的なワークショップやシンポジウム、連続ウェビナー、作家への⽀援等に関するアーカイヴ記事を順次掲載。国内外の様々な情報や、⼈とのつながりを強化することで、アイディアの交換や将来の共同研究、国際的な展覧会の実現といった機会の創出を⽬指す。
これらのコンテンツ以外にも、国内美術館における現代美術展や海外で開催された⽇本の現代美術展のアーカイヴ、戦後⽇本におけるギャラリー史の調査結果なども順次公開するという。
同サイト公開にあたって、⽇本現代アート委員会委員の座長で森美術館館長の⽚岡真実は次のようにコメント。「⽇本現代アート委員会では、2018年度より、積年の課題だった国内美術館収蔵品のバイリンガル・データベース化、主要⽂献の翻訳、⼈的ネットワーク構築のためのワークショップなどに取り組んで参りました。その成果を世界に向けて可視化するプラットフォームとして、この度、ウェブサイト「Art Platform Japan」がローンチされたことは、⽬指すところの第⼀歩です。今後、このサイトが継続的に更新され、物理的な渡航の有無に関わらず、⽇本の現代アートをこの広い世界、⻑い歴史と接続し続けていくための重要な基盤となることを⼼から願っています」。
また、同委員会委員である、東京⼤学⼤学院総合⽂化研究科教授である加治屋健司も次のようにコメントした。「国内美術館の収蔵品のデータベース、⽇本語で書かれた重要な⽂献、そして、⽇本の現代アートに関する様々な基本情報を英語で提供したり、海外の専⾨家を交えて議論を重ねたりすることは、⽇本の現代アートの制作、展⽰、研究を活性化して豊かにしていくものと考えます。こうした事業に持続的に取り組むことで、⽇本の現代アートが、その歴史や⾔説とともに、世界の現代アートとして評価されていくことを期待しています」。