新型コロナウイルスによって打撃を受けた文化セクターの復興計画として、フランス政府が20億ユーロ(約2500億円)の追加支援パッケージを提供すると明らかにした。
政府統計によると、フランスの文化セクターは2018年、国内総生産の約2.3パーセントを占めており、8万社の中小企業を中心に、67万人の雇用(労働人口の2.5パーセント)を創出していた。
今回の追加パッケージは、遺産の修復、舞台芸術への支援、アーティストや若手クリエイターへの支援、プレスや映画、書籍などの戦略的文化部門への支援、文化創造産業の将来への投資といった5つの優先事項を資金援助の対象として特定している。
投入資金額がもっとも多いのは、遺産の修復だ。総額6億1400万ユーロ(約770億円)の資金が充てられるこの計画では、フランス国内の大聖堂を改修する「大聖堂計画」として8000万ユーロ(約100億円)が投じられる。そのほか、自治体や民間所有者の歴史的建造物の修復(4000万ユーロ)や国定記念物の修復(4000万ユーロ)、パリの近郊にあるヴィレール=コトレ城の修復と開発プロジェクト(1億ユーロ)、博物館や公文書館などの遺産施設の改修(2000万ユーロ)にも資金が支出される。
また、ルーヴル美術館やオルセー美術館、オランジュリー美術館、ポンピドゥーセンターなどの公共施設も遺産修復の支援対象だ。6月末より再開しているこれらの施設は、国際観光客が40〜80パーセントと大幅に減少し、経営資源とプログラムの面での投資能力が低下するなどの危機に直面。その活動再開を支援するためには、総額3億3400万ユーロ(約420億円)の資金が投入される。
この決定について、フランス文化省は声明文で次のように説明している。「(新型コロナウイルスによる)健康危機の影響で資金繰りが逼迫しているなかで、遺産の保存・修復が急務となっている。復興計画は、経済発展、我が国の魅力と国際的な影響力、領土内の記念碑やその他の遺産施設(博物館、公文書館、考古学)への入場者数などの点で、非常に具体的な効果を持つ遺産の修復を可能にするだろう」。
また、アート関連の雇用や若手クリエイターへの支援策としては、総額1億1300万ユーロ(約141億円)の資金を拠出。そのうち、1300万ユーロ(約16億円)は、ライブ・パフォーマンスとビジュアル・アートに関連する雇用の確保に充てられ、若手クリエイターのキャリアと文化的高等教育機関の復興への支援プログラムとしては、それぞれ3000万ユーロ(約38億円)と7000万ユーロ(約88億円)が拠出される。
そのほか、音楽や劇場を含む舞台芸術部門、戦略的文化部門、文化創造産業への投資には、それぞれ4億2600万ユーロ(約534億円)、4億2800万ユーロ(約537億円)、4億1900万ユーロ(約525億円)を配分する。