2020.8.29

大英博物館、創立に寄与したハンス・スローンの胸像を台座から移動。奴隷貿易との関与を問題視

8月27日に再開を迎えた大英博物館が、奴隷貿易とのつながりを理由に、同館の起源とも言えるハンス・スローンの胸像を本来の台座から近くのキャビネットに移したことがわかった。

大英博物館のInstagramより
前へ
次へ

 新型コロナウイルスの影響で3月中旬より休館していた大英博物館が、8月27日に再開を迎えた。それに伴い、同館の起源とも言えるハンス・スローンの胸像が、奴隷貿易とのつながりを理由に、本来の台座から近くのキャビネットに移されたことがわかった。

 今年5月末より、アメリカ・ミネアポリスの黒人男性ジョージ・フロイドが殺害された事件に端を発した反人種差別の抗議デモが世界中に拡大。それに伴い、イギリス・ブリストルの奴隷商人エドワード・コルストンの記念碑を含む歴史的人物の彫像が破壊・撤去された事件も数多く発生している。

 今回の大英博物館の動きは、そうした公共の場での彫像に関する議論に関連し、イギリス植民地時代の過去を省みる取り組みの一環だと考えられている。

 ハンス・スローンは1753年、新しい博物館の建設を条件に、自ら収集した8万点以上の蔵書、手稿、版画、硬貨、印章などをイギリス政府に遺贈。そのコレクションは、大英博物館の所蔵品の基礎となった。

 しかし、そのコレクションはイギリス帝国の奴隷貿易と密接に結び付いており、スローンとその家族が当時イギリスの植民地だったジャマイカの砂糖農園の奴隷を搾取して収集したものだとされている。

ハンス・スローン 出典=ウィキメディア・コモンズ
(パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=401249)

 1730年代にマイケル・ライスブラックによって制作されたこのスローンの胸像は、イギリス帝国とその奴隷経済の歴史を反映する展示キャビネットに移動。そのラベルには、「収蔵家・奴隷主」と付け加えられているという。

 同館の館長ハートウィグ・フィッシャーはデイリー・テレグラフに対し、今回の決定についてこう説明している。「大英博物館は、大英帝国や植民地主義の歴史と奴隷制度に関する研究を加速し、拡大してきた。私たちはそれを隠してはいけない」。

 いっぽう、同館の決定に対して非難の声も上がっている。イギリス博物館協会の政策責任者であるアリステア・ブラウンは、自身のツイッターで次のように述べている。「この彫像は撤去されておらず、移動された。(展示が)中止されておらず、さらなる文脈が与えられただけだ」。