NEWS / HEADLINE - 2020.2.8

札幌国際芸術祭2020の参加アーティスト第一弾が発表。「幻のメディア・アート作品」も

2020年12月19日に開幕する「札幌国際芸術祭2020」が、参加アーティスト第一弾を発表した。国内外から19組がラインナップされている。

三上晴子 欲望のコード 2010 Photo by Ryuichi Maruo(YCAM) Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
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 2014年に初回が開催され、今年で3回目を迎える「札幌国際芸術祭(以下、SIAF)2020」の記者会見が札幌で行われ、参加アーティスト第一弾が発表された。

 今年のSIAFは初の冬季開催。人口200万人の規模でありながら、降雪量が5メートルを超えるという特性を持つ都市・札幌で、初回から掲げてきた大きなテーマである「都市と自然」をあらためて考える契機とする。

 ディレクターを務めるのは、天野太郎、アグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカ、田村かのこの3名。天野が企画ディレクター(現代アート担当)と統括ディレクターを、ジェドシェツカが企画ディレクター(メディア・アート担当)を、そして田村がコミュニケーションデザインディレクターを担う。

会場のひとつである札幌市資料館 撮影=詫間のり子

 今年のテーマは「Of Roots and Clouds: ここで生きようとする」。大地の根や先祖の記憶などを意味する「ルーツ」と、手で掴むことができない雲やネットワークを表す「クラウド」を内包するこのテーマ。目に見えないものにも想像力を働かせ、アートだけでなく社会全体をも考えるような芸術祭を目指すという思いが込められている。

 このテーマのもと発表された参加アーティスト第一弾は以下の19組だ。

Re:Senster、Cod.Act、三上晴子、ジュリアン・シャリエール、中﨑透、持田敦子、スザンヌ・トレイスター、キャロリン・リーブル&ニコラス・シュミットプフェーラー、一原有徳、神田日勝、後藤拓朗、大槌秀樹、青山悟、原良介、三岸好太郎、プシェミスワフ・ヤシャルスキ、ライナー・プロハスカ、村上慧、クラウス・ポビッツァー。

 これら参加作家は、「メディアアーツ都市のメディア・アート」「コレクションとSIAFの融合」「札幌ならではの芸術祭」という大きく3つの視点で分類することができるという。

Cod.Act πTon 2017 ベルフォート(フランス)でのパフォーマンス Photo by Samuel Carnovali. Courtesy od Artist

コアとなるメディア・アート

 まず「メディアアーツ都市のメディア・アート」。札幌は2013年にユネスコ創造都市ネットワークにメディアアーツ都市として加盟。過去2回の開催においても、メディア・アートは芸術祭の核となってきた。

 SIAF2020では、このメディア・アートにとくに注力。ジェドシェツカがメディア・アート担当ディレクターとして参加しているのもその現れだと言える。最終的には参加作家の半数を占めるというメディア・アート作品。なかでも注目したいのが、Re:Sensterと三上晴子だ。

 Re:Sensterは、1968年にエドワード・イナトビッチによって制作された全長5メートルほどの動く彫刻《Senster》の修復プロジェクト。周囲の音や動きに反応する《Senster》は、70年にオランダで展示されて以降、40年以上行方不明だった。発見されたのは2014年のこと。ポーランドのAGH技術大学によって修復され、WROメディアアートビエンナーレ2019(ヴロツワフ)で修復後初めて一般公開された。

エドワード・イナトビッチ Senster Photo by Natalia Kabanow Courtesy of WRO 2019 / WRO Art Center

 ジェドシェツカは、現代における本作の重要性についてこう語る。「メディア・アートの先見性を感じさせる例。長い間行方不明でも、人工生命に着目する多くの思想家やアーティストにとって、更なる実験への道を拓く、素晴らしいインスピレーションとなってきた。私にとって本作が重要なのは、この作品が自然や人間とテクノロジーを結びつける存在だから。生きている動物のような動きは、自然の概念を拡張するよう。新しい生態系を提唱するものだと思う」。なお、同作は今回がアジア初展示となる。

 いっぽうの三上晴子は、日本におけるメディア・アートの先駆者として活動。84年から情報社会と身体をテーマにした大規模インスタレーションを手がけ、95年以降は知覚によるインターフェイスを中心としたインタラクティブな作品を制作してきた。

三上晴子

 今回展示される《欲望のコード》は、将来のバージョンアップを想定した「未完の作品」として2010年に発表されたもの。ロボットアームやカメラなどによって構成された同作。ウェブ上にある監視映像と鑑賞者の映像が混ざり合い、スクリーンに投影されることで、不透明な監視社会のあり方を明らかにしていく作品だ。三上は惜しまれつつ15年に逝去したが、その意思を継いだ技術者らが同作をバージョンアップ。SIAF2020では、その新バージョンがモエレ沼公園で世界初公開される。

三上晴子 欲望のコード 2010 Photo by Ryuichi Maruo(YCAM) Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media[YCAM]

 ジェドシェツカは、SIAF2020におけるメディア・アートについて「メディア・アートは現代アートのなかでももっとも現代的」としながら、次のように呼びかけた。「日常生活を便利にするスマートフォンなどは、テクノロジーを自分の制作に使うアーティストにとっては制作のツールであり、その影響を批判的に検証する対象でもある。急速に変化するテクノロジーは、常に変化している現実を切り取るのに適したツール。一緒に目まぐるしく変わる現実を見つめ、それが私たちにどのような影響与えるのかを考えたい」。

モエレ沼公園 撮影=詫間のり子

北海道/札幌らしさをどう生かすか

 「コレクションとSIAFの融合」「札幌ならではの芸術祭」という点も忘れてはいけない。今回、会場には北海道立近代美術館北海道立三岸好太郎美術館、札幌市資料館など地元のミュージアムが含まれる。

 例えば、5000点を超える所蔵品を有する北海道立近代美術館のコレクションからは、一原有徳や神田日勝といった北海道ゆかりの作家を紹介するとともに、北海道の歴史をリサーチした若手作家たちの作品も一緒に見せるという。

 天野はその意義についてこう話す。「美術館を使った芸術祭を見ていると、真新しい作品が並ぶいっぽうで、その場所に着目した当事者性が低い。今回は場所として北海道をとらえなおしたい。コレクションが違う見え方をすれば」。

北海道立近代美術館 撮影=詫間のり子
北海道立三岸好太郎美術館 撮影=詫間のり子

 加えて、冬季開催ならではの作品も予定されている。天野は「なんらかのかたちで雪や自然環境を再考する作品ができつつある。これができるのは札幌ならでは」とし、寒冷地でしかできない屋外作品が予定されていることを明かす。

 北海道で欠かせないアイヌ文化についても、今回の開催から、SIAFの名称とテーマをアイヌ語でも表記(テーマ表記は「Sinrit(シンリッ) / Niskur(ニシクル、※シとルは小文字)」)。具体的な作品などは、9月に詳細が発表されるという。

 主催の札幌市を代表し、秋元克広市長は「自然と調和した都市・札幌らしい会場構成を期待している。アイヌ文化を含めた北海道らしさを世界に発信したい」と3回目のSIAFに期待を寄せる。「いままでにない自然との取り組みの作品をお見せしたい」という天野の言葉はどのように具現化されるのか。今後の参加アーティスト発表にも期待したい。

SIAF2020のコミュニケーションマークはワビサビがデザインした