今年より、森美術の館長・片岡真実が新会長に任命された国際美術館会議(CIMAM)。同組織傘下の美術館監視委員会(The Museum Watch Committee)が、ブラジルのリオ美術館が陥っている危機的な財政状況について声明を発表した。
リオ美術館は、2013年にリオデジャネイロ市政府によって設立された公立美術館であり、低所得地域社会に焦点を当て、国際的な展覧会や教育プログラムを組み合わせることによって、世界的な認知を得てきた。
設立されて以来、9000点以上の作品を収蔵し、ブラジルのビジュアル文化を記録した2万点以上の資料を含むアーカイブを構築してきたリオ美術館。過去6年間、ブラジルや国際的なアーティストによる60以上の展覧会を開催し、国内外から約300万人の来場者を集めている。
しかし現在、リオデジャネイロ市が陥っている深刻な財政難のため、同館の運営を支える公的資金の調達が困難な状態だという。昨年11月、同館は上級職員11人を解雇。100人の職員が全員解雇の可能性を知らせる通知を受けとったという。それは、同館の閉館を意味する。
この状況下で、CIMAMはリオデジャネイロ市政府と市長、マルセロ・クリベラに対し、同館のさらなる公的資金を確保するため、以下のことを要請した。
1)リオ美術館の存続 2)国際博物館会議(ICOM)によって確立された、博物館業界の国際基準に準拠したコレクションの保存と管理 3)美術館のアート専門家、教育者、文化管理者、運営管理者、警備員を含む100人の従業員チームの復職
2012年に設立されたCIMAMの美術館監視委員会はこれまで、「あいちトリエンナーレ2019」内の「表現の不自由展・その後」展示中止をはじめ、世界中の博物館・美術館や所蔵品が直面する様々な危機的状況に対し、一連の声明や抗議文を発表してきた。今回の声明も、公的議論を巻き起こすことを通し、美術館が直面する危機的な状況への対処を促すものだ。