ICOMにおいて災害リスク管理委員会が設立したのは、2005年のこと。国立京都国際会館で開催中の第25回ICOM京都大会ではこの災害リスク管理委員会が再編され、新たな国際委員会として「博物館防災国際委員会」が発足した。
9月4日にはプレナリーセッションとして「被災時の博物館-文化遺産の保存に向けた備えと効果的な対応」が開催され、博物館の防災についての発表が行われた。
セッションではまず、ICOMブラジル委員長のレナータ・ヴィエラ・ダ・モッタが、18年9月に発生したブラジル国立博物館の焼失について言及。2000万点に上る所蔵品のほとんどが焼失したこの事件の原因は、電気的な故障だとされており、ダ・モッタは「適切なメンテナンスを行えばリスクは低減できるはずだ」と指摘。
またポンセ美術館館長(プエルトリコ)のアレハンドラ・ペーニャ・グティエレは、2017年に2つのハリケーンによって被災した同館が、被災後1週間で再開館を実現した事例を発表。災害時の備えとして、「通信が途絶えた事態にも備えることが必要で、現代のように通信に馴染みきっていること自体がリスク」だとする。
これまでのセッションでもミュージアムとコミュニティの関係は幾度も語られてきたが、ここでもグティエレは災害時こそコミュニティとのつながりが重要だと主張した。「希望や強さをコミュニティに提供できれば、ミュージアムは大きな意味を持つ。公益のために、コミュニティの善のために活動するということが重要」。
いっぽう、ユネスコによって設立された文化財の保全・修復を行なう組織「文化財保存修復研究国際センター」(ICCROM)のアパルナ・タンドンは、防災計画におけるミュージアムの位置付けについて指摘。「博物館などの施設が防災計画に入っていないと、大規模災害が起きたときに文化財保護は優先されない。文化財レスキューの方法もわからなくなり、対応は寄付ベースとなってしまう」。
タンドンによると、18年には大規模災害が281件発生し、6000万人に被害をもたらしたという。このような現代において、「様々なセクターを横断する防災のエコシステムを構築する必要がある」という主張を展開した。