日本でも数少ない国際的な写真祭として存在感を放つ「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。その第8回が、2020年4月18日に開幕する。
来年のテーマは「VISION」。KYOTOGRAPHIEの共同創設者である仲西祐介は、このテーマ設定について次のように語る。「日本は世界でもっとも近視の人が多い国。それは日本の現在の状態を表している。遠い未来が見えていない理由は、過去と現在をしっかり見つめていないから。『VISION』というテーマで、それぞれが未来を想像できるプログラムにしたい」。
このテーマのもと、今回のKYOTOGRAPHIEは、二条城、誉田屋源兵衛、嶋臺(しまだい)ギャラリー、京都文化博物館 別館などに加え、山中油店 京町家、出町桝形商店街、鴨川周辺という3つの新会場を含めた十数ヶ所で作品を展開する。
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参加作家は、オマー・ヴィクター・ディオプ、マリー・リエス、ピエール=エリィ・ド・ピブラック、福島あつし、マイムーナ・ゲレシ、アルフレッド・ジャー、甲斐扶佐義、片桐功敦、小原一真、片山真理、ウィン・シャ、マリアン・ティーウェン、植田正治、そしてルイナールとのコレボレーションアーティスト(2020年3月発表)の14組。
セネガル出身のオマー・ヴィクター・ディオプは、出町桝形商店街の店主たちを収めたポートレートを巨大なプリントとして商店街に展示するほか、海を渡ったアフリカ出身の偉人に扮したセルフポートレートシリーズ「Diaspora」も展示。
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フランスの写真家マリー・リエスは、フランス国立盲学校の生徒を被写体としたポートレート作品を制作し、それをエンボス加工して展示。視覚がなくとも「見える」写真作品を発表する。
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2018年夏に美術の分野で平和に貢献したアーティストに贈られる「ヒロシマ賞」を受賞したアルフレッド・ジャー(2020年夏に授賞式開催)。これまでジャーナリスティックな視点を持ったアート作品をを世界各地で70点以上発表してきたジャーは今回、「日本のメディア」をテーマにした新作を発表予定。
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京都の市井の風景を50年以上取り続けている甲斐扶佐義は、70年代には屋外でその写真作品を自主展示する「青空写真展」を開催してきた。本展では、この青空写真展を再現する。
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2019年のヴェネチア・ビエンナーレにも出展するなど、いま高い注目を集めている片山真理はこれまで自身の身体をテーマにした作品を次々と発表してきた。KYOTOGRAPHIE 2020では、初公開となる作品を発表予定だという。
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このほか、東日本大震災と関連した企画として「Post Fukushima─A conversation between Atsunobu katagiri and Kazuma Obara(仮)」では、震災後の福島の風景に花を生ける片桐功敦と、震災直後に原発作業員と交流し、その日常と運命を見つめてきた小原一真のふたりを紹介。
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また恒例となっている世界最古のシャンパーニュ・メゾン「ルイナール」とのコレボレーション展示や、サテライトとして京都の各所で行われる公募制のプログラム「KG+」や「KG+SELECT」などもあり、次回のKYOTOGRAPHIEも盛りだくさんの内容だ。春の京都を彩る写真のフェスティバルに期待が高まる。