2019.7.11

10月開催「フェスティバル/トーキョー19」が全ラインナップを発表。8ヶ国12組による15プログラム

今年の10月5日から11月10日までの37日間、東京を基点に開催される「フェスティバル/トーキョー19」(F/T19)。7月11日に行われた記者会見で、その全ラインナップが発表された。

参加アーティストの一部
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 東京、日本を代表する国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー」(F/T)。6月、今年の開催テーマが「からだの速度で」となることが明らかにされたが、7月11日に行われた記者会見で、その全ラインナップが発表された。

セノ派 Photo by Ryosuke Kikuchi

 今回F/Tに参加するのは、8ヶ国を拠点とする12組のアーティスト。オープニングを飾るのは、小劇場をベースに活躍する舞台美術家の杉山至、坂本遼、佐々木文美、中村友美からなるコレクティブ「セノ派」だ。杉山は、「社会自体を劇場化できるのではないかと思いました。広場を中心としたヨーロッパの街に対して、日本は道に沿って発展してきた。練り上げることを主体として、私たちなりのパフォーミングアートを編み上げたいです」と話す。彼らがオープニングで見せるのは、地域と関わりながら生み出す『移動祝祭商店街』。道を構成する最小単位としての「商店街」に滞在し、地域の特徴を取り入れた特別な山車をつくる予定だという。

マグダ・シュペフト イメージヴィジュアル

 また、欧州演劇界の若き鬼才、マグダ・シュペフトが取り組むのは日本・ポーランド両国のスタッフ、キャストとおもに劇場に「ユートピア」を出現させること。今回、『ゲド戦記』でも知られるSF作家の小説『オールウェイズ・カミングホーム』のアイデアをもとに、演劇、ダンス、インスタレーション、ドキュメンタリーなどの要素を取り入れた横断的な作品を発表する。

香料SPICE イメージヴィジュアル

 シュペフトと同様に、SF作品に関連する作品をつくるのは中国・杭州を拠点に、哲学的な歌詞とマルチメディアを使ったライブパフォーマンスで注目される2人組のサイケデリック・エレクトロニックグループ「香料SPICE」だ。F/Tで発表する『新丛林 ニュー・ジャングル』は、自著のSFマンガを舞台化した作品。エレクトロニックとポップ、東洋と西洋の要素からなる、視覚、聴覚を揺さぶるライブ空間での体験に注目したい。

『ファーム』 イメージヴィジュアル

 韓国の新進気鋭の演出家、キム・ジョンも今回東京に初上陸する。再生医療の進化のなかで、生命観の見直しを迫れつつある現代。家族のあり方をあらためて問う松井周の戯曲『ファーム』が、このたび韓国人キャストで上演される。ジョンは「多くの人を魅了する、革新的な本作に取り組むことは大きなプレッシャーであるとともに、楽しみなことでもあります。人が生まれ、歳をとって死ぬことがどれほど孤独で美しいかを表現したい」と話す。

谷口暁彦 参考画像

 そのほかのプログラムは、JK・アニコチェ×山川陸が演出・設計する『Sand(a)isles』、ファンラオ・ダンスカンパニー『Bamboo Talk』と『PhuYing』、オクイ・ララ×滝朝子が企画・出演する『To 通 ツー』、谷口暁彦『やわらかなあそび』、コンセプト・ディレクションを北澤潤が務める『NOWHERE OASIS』、Hand Saw Pressディレクションの『 ひらけ!ガリ版印刷発信基地』 振付・演出を神村恵が行う新作、ドキュントメントの『Changes』シーズン2など。

神村恵 参考画像

 ディレクターの長島確は、「人々が速さ(早さ)を求めてきた結果、効率化が進み便利になった反面、体が悲鳴をあげ始めていると思います。かといってスローダウンはナンセンス。幼い、老いた、元気、疲れたなど、体の速度は一様ではないうえに、多くの種類のグラデーションで構成されている。そうした体から生まれてくるものから見えてくるもの、複数の体のコミュニケーションを起こしていけるのがパフォーミングアーツだと思います」として、「からだの速度で」の意図へと至った思いを表明。

 共同ディレクターの河合千佳は、「確実に面白いものになるので期待してほしいです。一新したロゴ、そして池袋や大塚にプログラムの拠点を複数構えることなど、今回は初となる試みばかり。参加者には、ひとりの責任において作品をつくるのではなく広い意味での共同作業をしてほしいと伝えていて、個々の視点が集まることで豊かになることを望んでいます。F/Tにはボートのような機能を持ってほしいと思います」と語った。

 期間中には12組による作品以外にも、多彩な連携プログラムも予定されているため、そちらも合わせて注目したい。