国立科学博物館(館長・林良博)は、科学を文化として育む博物館を目指し、「科学系博物館イノベーションセンター」を新設したことを明らかにした。
科博の収蔵品の活用方法を検討するこのセンターが目標とするのは、大きく分けて2つのこと。まずは、約470万点の収蔵品やスペシャリストの知識を活用した「財政基盤の強化」。そして、蓄積された博物館資源の循環による「事業活性化」だ。
茨城県つくば市内にある標本収蔵施設に、動物や植物、鉱物など約470万点の標本・資料を収蔵する科博だが、上野本館に展示されている標本・資料は約1万3000点ほど。そこで今回設立されたイノベーションセンターでは、巡回企画展や地域博物館との連携といった多様な展覧会スキームを開発するほか、標本を3Dデータ化し、VR技術を活用した新たな展示方法などを行っていくことで、全国の博物館の来館者増や活性化へとつなげる考えだという。
会見に出席した中村裕之(文部科学大臣政務官)は「資料を保管するだけではなく、地方の博物館にも利用してもらいながら地方創生やインバウンド対策に活用してほしい。人々が科学に興味を持つきっかけになれば」と期待を示した。
また、科博のロゴマークを手がけた佐藤卓は「どんな良いコンテンツもデザインによって見え方が大きく変わる。想像力を育む科博のため、このイノベーションセンターで協力していきたいです」と語った。
量・質ともにアジアナンバー1の自然史・科学技術史系デジタルアーカイブの公開を目指すほか、さらなるSNSの活用、来館者のための環境づくり、研究成果の発信、コレクションの活用など、多岐にわたる施策。誰もが新しい発見や驚きに出会える場所を目指した科博のこれからに期待したい。