現在、上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」でも目玉作品のひとつとなっている《牛乳を注ぐ女》(1660頃)。その作品世界を拡張させる試みを、東京・文京区の印刷博物館で見ることができる。
「ViewPaintフェルメール《牛乳を注ぐ女》」と題されたこのインタラクティブ装置は、デジタルアーカイブデータの表現手法として凸版印刷が2013年3月に制作した絵画鑑賞システム。
目白大学教授・小林頼子監修のもと、当時の博物資料や研究資料を活用し、作品内の文物の色やかたちを再現。透視図法の読み解きやCGシミュレーションに基づき三次元空間を構築し、鑑賞者はコントローラーでの操作によって、絵画では描かれていない《牛乳を注ぐ女》の背中側や頭上からの視点で作品を鑑賞することができるようになっている。
本システムを開発した理由として、凸版印刷は1997年から文化財のデジタルアーカイブデータの公開手法のひとつとしてVR技術の開発に取り組みんできたことを挙げ、次のように説明する。
「このVR技術を用いて、二次元の絵画作品の魅力を伝える新しい絵画の公開手法を検討しました。本コンテンツの製作にあたり、フェルメールの作品を題材に取り上げたのは、フェルメールがカメラ・オブスキュラを用いていたという説に基づき、作品の透視図法を逆算し三次元空間化することで、絵画空間と現実空間の相違が明らかにし、美的フィルタを読み解くけるのではないかとの考えからです」。
平面絵画の世界を文字通り拡張させるこの試み。「フェルメール展」と併せてチェックしてみるのも面白いかもしれない。