スイスのバーゼルや香港、そしてアメリカ・マイアミで世界最大のアートフェア「アート・バーゼル」を手がけるMCHグループ。
このMCHが、ART HKの創設者でもあるティム・エッチェルズ、アートコンサルタント会社のアンガス・モンゴメリー・アーツと共同で、2019年11月にシンガポールで新たなアートフェア「ART SG」を開催すると発表した。会場となるのは同国を代表する観光スポット「インフィニティプール」で知られる「マリーナベイ・サンズ」だ。
シンガポールでは2011年より、アート・バーゼルの元ディレクターであるロレンツォ・ルドルフがオーガナイズするアートフェア「アート・ステージ・シンガポール」が毎年開催されてきた。しかしながら、2018年の出展者数は昨年から40軒ほど少ない84軒となるなど、出展ギャラリー数は減少傾向にある。
この状況下で「ART SG」がもたらすインパクトはけっして小さくないだろう。同フェアではアジアおよび世界各国から80の現代美術ギャラリーが参加予定。アート・バーゼルで培った強固なネットワークが生かされることが予想される。
同フェアについて、シンガポール政府観光局のディレクター、セレーヌ・タンは「シンガポールは東南アジアにおけるビジュアル・アートへの入り口としての立ち位置をより強固なものにするでしょう」とコメント。
同国では、シンガポール国立博物館と南洋理工大学シンガポール現代アートセンターといった従来のアートスポットに加え、2015年12月には総床面積約6万4000平米という巨大なナショナル・ギャラリー・シンガポールが完成。また、国中を巻き込んだアートイベント「シンガポール・アート・ウィーク」を定期的に開催するなど、アートへの投資を積極的に行ってきた。
この状況を踏まえ、ティム・エッチェルズとアンガス・モンゴメリーは「まさにいま、シンガポールが最高のアートシティに、またアートの中心地になるタイミングです」とコメント。「シンガポールは6.2億人を要するASEANの主要都市から飛行機で2時間以内の距離にあり、このマーケット規模は北米やユーロ圏、そして中東より大きいものです」とシンガポールの地理的優位についても強調している。
アジアのアートマーケットでは香港や上海の勢いが増す昨今。「ART SG」がこの勢力図にどのような影響をもたらすのか、注目が集まる。