前澤友作のコレクションにまた一つ、新たな歴史が刻まれた。
公益財団法人現代芸術振興財団会長でスタートトゥデイ代表取締役社長、そしていまや世界的に知られるコレクターでもある前澤が新たに収蔵したのは、長谷川等伯筆の《烏鷺図屏風(うろずびょうぶ)》。同作は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した絵師・長谷川等伯(1539〜1610)の作品で、六曲一双、幅各354cmの大画面に、飛び交うカラスと羽を休める白サギの群れが、水墨の流麗なタッチで対照的に描かれている。
制作時期は少なくとも1605年以降。等伯晩年期の代表作で、1969年には国の重要文化財に指定された。長らくDIC川村記念美術館のコレクションとして親しまれてきたが、昨年の同館日本画展示の終了に伴い譲渡。この譲渡については、発表当初からその行方に大きな注目が集まり、今年に入って橋本関雪の作品3点《琵琶行》(1910)、《木蘭》(1918)、《秋桜老猿》(1938)について、京都の白沙村荘 橋本関雪記念館が収蔵を公表したことで脚光を浴びた。
前澤は今回収蔵した《烏鷺図屏風》について、「生まれて初めて屏風を購入しました。しかも国の重要文化財。しかも長谷川等伯作。安土桃山から江戸初期の時代背景に思いを馳せながら、私流に作品を愛し解釈し、皆様ともこの素晴らしさをシェアしていきたいと思います」とコメント。同作は、今後開催される展覧会等を通じて、一般公開される見通しとだという。
今年に入り、フランスの芸術文化勲章「オフィシエ」を受章するなど、その動向に大きな注目が集まる前澤。受章の際に出した「これからも芸術文化を愛する一人の熱心なファンとして、そしてその素晴らしさを世界中の皆様にお伝えする紹介者として、引き続き芸術文化に深く関わらせていただきたいと切に思います」というコメント通り、芸術へのコミットメントはますます深さを増していくだろう。