2017年10月から、世界中を席巻している「#MeToo」運動。セクハラや性差別で悩んできた被害者たちが声をあげ始め、アメリカを中心に映画業界やクラシック業界などの重鎮たちが次々と告発されてきた。
そしてその波は建築業界にも波及している。世界的な建築家であるリチャード・マイヤーの加害行動が、被害者である5人の女性たちから暴かれたとニューヨーク・タイムズ電子版が現地時間3月13日に伝えた。マイヤーはこの告発を受け、ニューヨークとロサンゼルスで経営している自身の建築事務所を2018年3月13日付けで6ヶ月間停職処分となったと、同事務所が発表した。
リチャード・マイヤーは1934年アメリカ生まれの建築家。マルセル・ブロイヤーのもとで経験を積み、63年に独立。モダニズム建築の重要人物として知られており、84年には建築界のノーベル賞とも呼ばれるプリツカー賞を受賞している。白く明るい外壁や、直線と曲線が合わさった優美な作風を特徴とし、ロサンゼルスのゲッティセンターをはじめとする世界各国の美術館や、オランダ・ハーグ市の市庁舎と中央図書館、日本でも東京・中央区のザ・パークハウス晴海タワーズのランドスケープデザインを手がけている。
ニューヨーク・タイムズでは、被害にあった女性たちが実名で被害状況を告発。裸になることを強要されたということや、下着をつかまれたということ、強制的にベッドに引きずり込まれたことなどが明らかになっている。
これらの報告を受け、マイヤーの母校であるコーネル大学の建築・芸術学部の学部長であるケント・クラインマンは、「容認できることではない」と厳しいコメントを出している。今年1月にマイヤーは同大学大学院に、女性受験生のための奨学金を設立したばかりだった。
マイヤーは「私の言葉や行動によって怒っている女性たちの話を聞き、深く混乱し、また恥ずかしく思っている。私たちの記憶は異なっているかもしれないが、私の行動によって怒っている人々に心から謝罪する」と表明している。