昨年、ニューヨーク・メトロポリタン美術館に展示されているバルテュスの《夢見るテレーズ》に対して起こった撤去要請運動が記憶に新しいが、今回は美術館側の自主的な撤去が行われたようだ。
問題となったのは《ヒュラスとニンフたち》。これは、ギリシャ神話から主題を得た作品で、若々しい裸のニンフたちがヒュラス国王を池の中に誘う場面を描いたもの。同美術館では同様の作品が数点「美の追求」と題されたスペースに飾られているが、女性を「受動的な着飾り」や「ファム・ファタル」とする「非常に時代遅れ」な表現であると当該学芸員クレア・ギャナウェイにより注意書きがなされていた。今回同館は、セクシュアリティな表現を公共の場において飾るべきか否かが議論される現代において、「裸の少女たち」が描かれた同絵画は人々に討論を促す作品のひとつであるとして撤去に乗り出した。
撤去後、ソーシャルメディア上などで多くの反応が見られたが、いずれも美術館側の対応はあまりにも清教徒的で行き過ぎた行動である、との否定的な意見が目立つ。しかし同美術館は「ヴィクトリア的幻想に打ち勝とう!」の文言をブログ上に投稿し、非難を一蹴。ギャナウェイは「この撤去はけっして強制的な圧力で作品の自由な鑑賞を制限するものではない」「現在美術館は、ジェンダー、人種、そしてそれにまつわる表現について複雑な問題を抱えていおり、私たちはその問題について、積極的に議論したいと考えている」としている。
また同時に、この決定は昨今活発化している「MeToo」や「Time’s up」運動の影響も大きいと語り、議論活発化のために美術館の来訪者に対して、同作品が飾られていたスペースに自らの意見を書いたポストイットを貼り付けるように促しているが、その多くが非難の声となっている。またツイッター上では、セクハラや性差別に対しての抗議運動の要素を都合良く利用した、単なる独善的行為だとの指摘も多く見られる。
Some interesting comments already on the @mcrartgallery wall and online too https://t.co/Q667SptU5Y #MAGsoniaboyce Looking forward to more conversation about this... pic.twitter.com/21omdwR9vY
— MAGcurators (@MAGcurators) 2018年1月30日
なお、今回の撤去については映像で記録され、3月23日から同館で行われるソニア・ボイス展の一部になるという。