写真家のアラーキーこと荒木経惟は、77歳を迎えた今年、1年で15以上の個展を開催するなど精力的な活動を行っている。そんな「荒木写真イヤー」の締めくくりともいえそうな、今年3つ目の大型個展が、12月から丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県)で開催される。
「私、写真。」と銘打たれた本展では、父母の死をとらえた《父死去》(1967)、《母死去》(1974)から始まり、「生と死」を写し続けてきた荒木のこれまでを紹介。出品作は、膨大な作品のなかから、腐食したフィルムをプリントする、写真に絵具を塗るなど、何らかの手を加えることによって「生と死」をより強く意識させるような作品を中心に選ばれている。
さらに、本展のために制作された4つの新作シリーズも発表。荒木と二人展を開いたこともある香川県丸亀市出身のいけばな作家・中川幸夫へのオマージュを込めた《花霊園》、亡くなった知人の夫人から贈られたカメラで空を撮影した《北乃空》、荒木が敬愛する葛飾北斎の命日である4月18日と自身の誕生日の5月25日の日付で日常を撮った《北斎乃命日》、女性を撮った写真にペイントを施した《恋人色淫》と、どれも荒木の次のステージを予感させるような作品となっている。
そのほか、《青ノ時代》(2005)、《去年ノ夏》(2005)、《死空》(2010)といった日本初展示のシリーズも登場。「生と死」をめぐる荒木のこれまでとこれからを見通すことのできる、貴重な機会となるだろう。