2017.11.22

人々の生活に寄り添った写真家、
ユージン・スミスの作品に見る
ジャーナリズムの原点

アメリカのドキュメンタリー写真家、ユージン・スミスの生誕100年を記念する回顧展が、東京都写真美術館で開催される。会期は11月25日〜2018年1月28日。

楽園への歩み、ニューヨーク郊外 1946 © 2017 The Heirs of W. Eugene Smith
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 雑誌『ライフ』を中心に、「カントリー・ドクター」「スペインの村」など、人々の生活に密着した数多くのフォト・エッセイを発表したアメリカの写真家、W. ユージン・スミス(1918〜78)。世界的写真家集団「マグナム・フォト」の正会員でもあり、フォト・ジャーナリズムの歴史に大きな功績を残した写真家として知られている。

ウォーターライドのカップル ニューヨーク郊外 1941 © 2017 The Heirs of W. Eugene Smith

 17歳のとき、ニューヨークで偶然出会った日系写真家の作品に感銘を受け、写真の道を志したスミスは、日本とのかかわりも深い。太平洋戦争中には、戦争の現実をカメラに収めるために従軍し、沖縄戦で自らも重傷を負った。戦後は、日本経済復興の象徴ともいえる巨大企業を取材した「日立」、その経済復興の過程で生じた公害汚染に苦しむ漁民たちに寄り添った「水俣」などの作品も発表している。

水俣問題の中央公害審査委員会、東京 1971-73 © Aileen M. Smith

 スミスの生誕100年を記念して開催される本展では、スミス自身が生前にネガ・作品保管を寄託したアリゾナ大学クリエイティヴ写真センターによる協力のもと、同館所蔵の貴重なヴィンテージ・プリント作品150点を展示。様々な情報があふれる現代において、ジャーナリズムの原点を見つめ直す機会となるだろう。

通夜、スペイン 1950 © 2017 The Heirs of W. Eugene Smith